【川嶋評論】全力出し男を上げた八重樫
「ダブル世界戦」(5日、代々木第二体育館)
WBC世界フライ級王者・八重樫東(31)=大橋=が壮絶に散った。プロアマ通じ無敗の怪物、ローマン・ゴンサレス(27)=ニカラグア=の前に9回2分24秒TKO負け。4度目の防衛はならなかった。ゴンサレスは母国の英雄・アルゲリョに肩を並べる悲願の3階級制覇を達成。プロアマを通じ127戦無敗、プロ成績を40勝(34KO)に伸ばした。セミファイナルのWBC世界ライトフライ級王者・井上尚弥(21)=大橋=は挑戦者サマートレック・ゴーキャットジム(29)=タイ=を11回1分8秒TKOで下し、初防衛に成功。フライ級へ転向し、2階級制覇に挑戦することを表明した。
◇ ◇
【川嶋勝重ホットアイ】やっぱりローマン・ゴンサレスはレベルが違いました。1ラウンド開始直後に八重樫が速い左ジャブを打ったんですが、それをいとも簡単にさばいてしまった。このシーンを見て、“これは厳しい戦いになるな”と感じました。ロマゴンはアップライトのスタイルから強烈なプレスをかけてくる。下の階級から上がってきているのに、八重樫より体が大きく見えるくらい前に出てくる重圧がすごい。
本当はもっと足を使ったり、スピードを生かして出入りしたかったところですが、途中の公開採点で大きくリードされ、正面からリスク覚悟の打ち合いを挑まざるをえない展開になってしまった。中盤からダメージの蓄積が明らかでしたし、8ラウンドには完全に足にきて動けなくなりました。その時点で勝負は決していました。でも、全力を出し尽くしたファイトで男を上げたと思います。
井上尚は挑戦者との実力差があり過ぎて、逆に得意のカウンターが取りづらくなってしまった。それでも左ジャブだけで完全に試合をコントロールしていたし、スイッチも試していました。見ている人には倒すまでに時間がかかったと思うかもしれません。しかし、彼のキャリアにとっては長いラウンドを経験したことは必ず将来に生きるはずです。(元WBC世界スーパーフライ級王者)