天笠、大拳闘!TKO負けもダウン奪う
「WBA・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチ」(31日、ボディメーカーコロシアム)
ボクシングダブル世界戦のメーンイベントではWBA・WBO世界スーパーバンタム級タイトルマッチが行われ、挑戦者でWBA同級10位、WBO同級6位の天笠尚(29)=山上=は統一王者のギジェルモ・リゴンドー(34)=キューバ=に大健闘の末、11回終了TKOで敗れた。
天笠尚(山上)の善戦を誰が想像しただろうか。戦前の予想は、無敵リゴンドーの圧勝を世界中が当然視。王者を追い詰め「僕は敗者。何も言うことはない」と、潔く世界初挑戦の失敗を受け入れた。
勝利への扉が開きかけたのは7回。天笠が先に王者から2回もダウンを奪った。まずは右ストレート、次に連打を打ち抜くと、リゴンドーはあっけなくキャンバスに沈んだ。王者は自らの失態にぼう然とし、8回以後は足が止まった。
天笠は猛攻。陣営も「相撃ちだ」と玉砕覚悟の指示を出した。しかし、10回に流れが変わった。リゴンドーの左ストレートでダウンを奪われてラッシュに遭うと、人相が変わるほど左頬が大きく腫れ上がった。
それでも、天笠陣営は11回終了で試合を棄権した。山上会長は「天笠は根性があって、痛いとも言わない。あれ以上やって、おかしくなってもいけない。いい試合で、お客さんも納得している」と説明した。
リゴンドーも驚きを隠さなかった。「1回で2度のダウンは初めて。天笠の勇気と根性は予想以上」。体面を保つために「世界王者になる可能性もある」とリップサービスも忘れなかった。
試合後の天笠は検査のために、大阪市内の病院へ直行。診断の結果は顔面打撲だった。13年大みそかは「田舎に帰って、友人と初詣に」と平凡な日常を過ごしていた青年が、もう少しでボクシングの常識を覆す活躍をして、全世界のボクシングファンを震撼(しんかん)させた。