元王者天笠を応援する異色の編集社とは

 すべての闘う者への応援団-。昨年末、世界スーパーバンタム級統一王者ギジェルモ・リゴンドー(キューバ)から2度ダウンを奪い、鮮烈なインパクトを残した元東洋太平洋フェザー級王者、天笠尚(30)=山上=が、11月11日に世界前哨戦を行う。

 そんな天笠を見ていて、ふと気になったことがある。彼のトランクスに「感電社」なる聞き覚えのないスポンサー名が貼られているのだ。それは果たしていかなる組織なのか。

 調べてみると同社は編集社で、産声を上げたのは2014年。主に水道工事を請け負う会社を経営する柳知進氏(35)が「社会の基盤を作っている土木建築業にスポットライトが当たらないと世の中はダメになる」と一念発起し、ライターで編集者の石丸元章氏(50)に声をかけたことからスタートした。

 そして2人が「すべての闘う者を応援する」をコンセプトに、今までにない新しいメディアを生み出そうと誕生したのが、同社が発行するフリーマガジン『BLUE’S(ブルーズ)マガジン』である。

 この雑誌、一言でいうと頭二つ分くらいぶっ飛んでいる。土木系総合カルチャーマガジンという全く新しいジャンルを捻出しつつ、世の中のあらゆる事象をひたすら“現場目線”で切り取っていく。たとえば取り壊され、さら地と化した旧国立競技場の前で、“新国立問題”について柳氏と石丸氏が「現場職人の視点」と「社会的な視点」の両面から議論するというもの。あるいは、バイク好きが高じて溶接工となった女性や、ハードコア音楽バンドの活動と並行して現場で働く者のインタビューなど。現在、3万部以上を発行し、全国各地で配布している。

 柳氏は「現場には格闘家だったり、ダンサーだったり、俳優だったり、ミュージシャンだったり、いろんな夢を持ったやつが働いている。そいつらにスポットライトを当てたい」と、本業の傍ら慣れない雑誌づくりに奔走している。石丸氏は「柳さんと話をしてみて、あまりに熱い思いだったので感電しちゃったんです」と、創刊に至った経緯を明かす。

 そんな感電社が、ボクシング界で心血を注いで応援してきた1人が天笠だ。毎号誌上で紹介しながら、昨年末のリゴンドー戦にも総出で大阪に駆けつけた。敗れはしたものの、「中途半端な自分を変えたかった」と顔面をボコボコに腫らしながら世界一のディフェンス技術を持つ王者を攻め立て、2度もダウンを奪った姿に心を打たれた人も多いはず。まさに「闘う者」からの「感電」。それは格闘技の、スポーツの魅力そのものなのかもしれない。

 創設から1周年を迎え、これまで計4刊を発行している同社は、天笠以外にもアスリートを応援していくという。「ボクシングや格闘技、スポーツでもなんでもいいので、とにかく日の目を浴びようと必死で闘う人を応援していきたい」(石丸氏)。これからもブルーズマガジンに、そして天笠に続く「感電社印」のアスリートに注目していきたい。(デイリースポーツ・藤川資野)

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