「ボクシング・ＷＢＯ世界スーパーフライ級タイトルマッチ」（８日、有明コロシアム）

　ＷＢＯ世界スーパーフライ級王者の井上尚弥（２３）＝大橋＝は同級１位の挑戦者ダビド・カルモナ（２４）＝メキシコ＝に３－０の判定で完勝し、２度目の防衛を果たした。２回に右拳を痛めたこともあって世界戦５試合連続ＫＯは逃したものの、十分にすごみを見せつけた。ＩＢＦ世界ライトフライ級王者の八重樫東（大橋）は同級１１位の挑戦者マルティン・テクアペトラ（メキシコ）に２－１の判定で初防衛に成功した。

　大差の判定勝利の裏側で、井上尚が冷や汗ものの苦闘に挑んでいた。２回に放った右がカルモナのほお骨をヒットしたものの、拳打撲のおつりをもらった。

　右拳に違和感を感じる中、５回に父・真吾トレーナーから「倒しにいけ！」と指示が飛んだ。だが、どうしても左フックが中心となり、ラッシュも詰め切れなかった。

　セコンドに右拳の異常を伝えたのは６回だった。「２回にやって、５回に異常を感じた。左でコントロールしようと思った」と頭を切り替えて臨んだ。

　左拳だけで何とかしたかったが、カルモナはタフだった。「やりづらい相手ではなかったけど、ディフェンスがしっかりしていた。思った以上にタフで、攻めきれなかった」と悔しさをにじませた。

　それでも最終１２回はすさまじい執念でＫＯを奪いにいった。ボディーの応酬から一転、風車のように左右を連打。カルモナをロープ際に追い詰めると、強烈な右ストレートで、ようやく初のダウンを奪った。

　何とか立ち上がったカルモナの懸命なクリンチを強引にふりほどき、さらにパンチを浴びせ続ける中、試合終了のゴングが鳴った。１３年の田口良一（現ＷＢＡ世界ライトフライ級王者＝ワタナベ）戦以来プロ２度目、世界戦では５試合目で初めてＫＯ勝ちを逃した。

　大橋会長は「右に異常が発生しているのに、最後のラッシュはすごい。ただものではない」とまな弟子をたたえた。次戦は、契約の関係で前王者のオマール・ナルバエス（アルゼンチン）との再戦が決まっている。衝撃の２回ＫＯでベルトを奪った相手との再戦について井上尚は「あれ以上の試合となるとすごいプレッシャーですけど、勝ちに徹したい」と笑顔を見せた。