健康基金巡り揺れるボクシング界
日本ボクシング協会(JPBA・渡辺均会長)が、日本ボクシングコミッション(JBC)に対し、リング上で起きた重大事故のために、14年末まで選手のファイトマネーから一定の割合で徴収していた「健康管理見舞金」が、安河内剛前本部事務局長や亀田ジムとの訴訟費用で毀損(きそん)されているのではないか、と説明を求めている。
7月11日には東日本ボクシング協会理事会が、JBCに意見書を提出し、基金の残高や裁判費用の詳細開示などを求めた。さらに13日にはJPBA理事会を開き、統一見解とした。
そんなさなか、あってはならないリング禍が起きた。7月12日、後楽園ホールで行われたセミファイナル、ライト級8回戦で判定負けした島倉裕矢(21)=岐阜ヨコゼキ=が試合後、右急性硬膜下血腫のため、都内の病院で開頭手術を受けたのだ。
島倉選手は4回に左目の上をカットされ流血。2度のドクターチェックを受けたものの出血は最後まで止まらず、最後までダウンすることなく闘った。だが、流れる血が目に入り、相当数のパンチを浴びていた。悲壮にも映るファイティングスピリットに、試合後は場内から大きな拍手が送られただけに、このような結果は残念でならない。
そして、改めて「健康管理見舞金」の大切さを感じる。選手のファイトマネーから一定の割合を徴収し、積み立ててきた基金。島倉選手のような不測の事態のためのもので、それ以外に使われたとすれば大問題だろう。
かねて使途不明の疑義を訴えてきた緑ジムの松尾敏朗会長は、この事故を受け急きょJPBA理事会に出席した。松尾会長は「ボクサーの権利を守る会」を設立し、JBC関係者を東京地方検察庁に告発する準備も進めているという。(デイリースポーツ・津舟哲也)