長谷川の美学「余力を残して引退するのもひとつの辞め方」名王者ゆえに許される引退

会見する長谷川穂積=神戸市内のホテル(撮影・高部洋祐)
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 ボクシングのWBC世界スーパーバンタム級王者・長谷川穂積(35)=真正=が9日、神戸市中央区の神戸ポートピアホテルで会見し、現役引退を表明した。

 王者のまま引退することについて長谷川は「ボロボロになって辞めるのもひとつの美学だと思いますし、多少の余力を残して引退するのもひとつの辞め方。僕はチャンピオンのままでできれば引退したいと思って過ごしてきたので、このタイミングが一番かなと決断しました」と自らの美学を貫いたことを強調した。

 5年5カ月を無冠で過ごし、不利と言われた9月のウーゴ・ルイス(メキシコ)戦で感動を呼ぶ9回TKO勝ち。3階級制覇を達成した。「自分自身に対してこれ以上証明するものがなくなったというのがひとつ。もうひとつは心と体と一致させて世界戦をして世界チャンピオンになるという目標で戦ってきて、それを達成することができて戦う理由ももうなくなって、前回以上の気持ちをつくるのが難しくなったというのが大きな理由です」と決断の理由を説明した。11日から米国フロリダ州ハリウッドで開催されるWBC総会に出席し、王座を返上する。

 世界王者がベルトを保持したまま引退することは珍しい。国内では元WBA世界フライ級王者・大場政夫(帝拳)が1973年1月に5度目の防衛戦直後に交通事故死して“永遠のチャンピオン”となった例がある。少し異なるケースでは、2001年8月にWBA世界ミニマム級王座を獲得した新井田豊(横浜光)が王座奪取後に達成感から引退を表明したが、03年7月に現役復帰した。また、元WBC世界スーパーフライ級王者・徳山昌守(金沢)は06年2月に2度目の戴冠となった同級王座の初防衛に成功後、王座を返上。そのまま試合を行うことなく07年3月に引退を表明した。

 海外では49戦全勝のまま「もう戦う相手はいない」と言い残してリングを去った元世界ヘビー級王者のロッキー・マルシアノ(米国)や、同じく49戦全勝のまま引退した元世界5階級王者のフロイド・メイウェザーの例がある。名王者だけに許される身の引き方ともいえるだろう。

 後悔はないかと問われた長谷川は「半年後に復帰していたら笑ってください」と場を和ませた後、「まあ、それはないですけど。これ以上ないボクシング人生を歩めたことを誇りに思っている。それが(リングに戻りたいという気持ちに)セーブをかけるでしょう」と現役に未練がないことを強調した。

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