長谷川穂積引退 異例!世界王者のまま…不死鳥伝説残し17年間のボクシング人生に幕
ボクシングのWBC世界スーパーバンタム級王者・長谷川穂積(35)=真正=が9日、神戸市内で会見し、現役引退を表明した。9月16日に国内最年長35歳9カ月で世界王座に返り咲き、世界3階級制覇。最後に自身の強さを証明し、17年間のボクシング人生を完全燃焼した。現役世界王者のままでの引退は極めて異例で、日本ボクシング史に新たな“不死鳥伝説”を刻んだ。今後は未定ながら、指導者の道は選ばず、実業家への転身が見込まれる。
涙はなく、悔いもない。注目された進退は世界王者のままでの引退。衝撃の表明を、壇上の長谷川は終始晴れやかに語り続けた。
「引退理由は自分に証明することがなくなった。もう一つは心と体を一致させて世界戦をして世界王者になる目標を達成し、戦う理由もなくなった。前回以上の気持ちを作るのが難しくなった。自分の思っていた以上の足跡を残せたボクシング人生だった」
9月16日に5年5カ月ぶりに世界王座に返り咲いた。左手親指を脱臼骨折しながら、9回TKOで奇跡の勝利。初防衛戦に向け戦う意義を見いだそうと自身と向き合い続けた。
11月6日にはWBO世界スーパーバンタム級王者だった元世界5階級王者ノニト・ドネア(34)=フィリピン=が王座を陥落。山下正人会長によれば「モチベーションを維持できるそれ以上の相手はいない」と“花道”となる好敵手が、もう長谷川には見当たらなかった。
迷い抜いた末、11月中旬に引退を決断。「僕が強いかどうか、強いならどれくらい強いのか。前回でその答えが出た。これ以上、答えを探す意味はない。前回の気持ちを作れば負けない自信はあるけど、気持ちを作るのは難しい。自分の中では今が一番美しい」。王座は11日にWBC総会に出席し、直接返上する。
一番の思い出は「初めてチャンピオンになった試合。すごく夢がかなった瞬間」と、05年4月、当時14度王座を防衛したウィラポン(タイ)を撃破し、WBC世界バンタム級王座を獲得した試合だ。
そこから10度防衛し、日本ボクシング界低迷期を1人で支え続けたエースに駆け上がった。スピードあふれる連打、華麗なフットワークはファンを魅了。必殺のカウンターでKOを量産し年間最優秀賞も計4度獲得した。
10年10月24日には最愛の母・裕美子さん(享年55)が他界。悲しみを乗り越え、同年11月、WBC世界フェザー級王座を奪取し、飛び級での世界2階級制覇を果たした。
記録も記憶も残し、時代を築いた希代の名チャンプ。第2の人生は「新しいステージでチャンピオンになれるように」と、実業家への転身などを計画しているもよう。指導者の道は現時点ではない。ただ、ボクシングには常に関わっていく。
「ボクシングは僕の人生のすべて。ボクサーとして何ができるかこれからも考えたい。ずっとボクサー長谷川穂積として生きていきたい」。17年、41戦、不死鳥のごとく何度もよみがえったレジェンド穂積。引き際までも、これほどに美しいチャンプはいない。