大久保が亡き父に捧げる100ゴール
2013年7月14日
天に見せたい顔があった。今年5月12日に父・克博さんが他界。父のいなくなった病室に、家族に向けられた手紙があった。「嘉人、サッカー頑張れ。身だしなみもしっかりしろ。長い髪はみっともない。髪を切ること」。震える手で書かれた遺言。胸がいっぱいになった。
帰京後、短髪姿で努めて明るく振る舞ったが、ある時、漏らした。「もっと、お父さんと話をしとけば良かったかな」。身につけた腕時計は自らが父に贈った記念品。「還暦祝いであげたやつ。俺、腕時計するの嫌いやけど、これは形見としてずっとつけていくわ」。亡き父と共に歩いていくと決めた。
家族にも見せたい背中があった。今季から川崎に移籍。J2に降格した古巣・神戸から出ることに抵抗がなかったわけではない。それでも「まだまだできることを証明したい」。引っ越し直前、次男は幼稚園に通園するバスの中で泣いたと聞いた。「寂しいと言っていて、申し訳なく思った」。等々力のスタンドには、家族の姿。この日は誇らしかった。