浦和、差別撲滅へ誓いのJ初無観客試合
「J1、浦和1-1清水」(23日、埼玉)
浦和のサポーターが8日の鳥栖戦(埼玉)に差別的な横断幕を掲示した問題の処分で、サッカーのJリーグで初の無観客試合となったJ1の浦和‐清水が23日、さいたま市の埼玉スタジアムで開催され、1‐1で引き分けた。浦和が自粛をファン・サポーターに呼びかけたため、来場者はなし。浦和は選手、スタッフらが「差別撲滅宣言」に署名し、再発防止へ全力を尽くすことを表明した。
空っぽのスタジアムにむなしさが残った。先制点を許しながらも後半31分にMF原口のゴールで追いついたが、結果を分かち合うサポーターがいない。試合終了後すぐに、浦和イレブンは淡々と引き揚げるしかなかった。
サポーター不在を原口は「やっぱり大切な仲間だと感じた。また一緒に戦いたい」と悲しんだ。「それファウルなら、さっきもファウルじゃん」「(原口へ)元気!OK!」など、ピッチ内の選手の声が場内に響く異様な環境で、あって当然だった声援のありがたみが選手の身に染みた。
スムーズに無観客試合を終えるべく、浦和はクラブを挙げて臨んだ。会場敷地の公園を含め、229人の社員や警備員を配置。近隣の浦和美園駅、東川口駅には、スタジアム周辺に応援目的で入れない旨を伝える看板を掲げた。
犬の散歩に来た老夫婦にも「ご用件は」と声をかける徹底ぶりで、両軍サポーターの来場者はゼロ。前回のホーム開催・鳥栖戦では235人だったメディア関係者が、2倍近い438人も集まる中、トラブルは起きなかった。
差別問題を重くみた浦和はこの日、「差別撲滅宣言」を発表。試合前にはベンチ入り選手がピッチに並び、阿部主将が宣誓文を読み上げた。今後は提携する国連関連機関「国連の友アジアパシフィック」と具体策を練る。
差別撲滅宣言には選手、クラブスタッフ全員が署名し、サポーターの賛同者を募るという。ゴール裏席の指定席化、旗類の登録制など、誰もが楽しめるスタジアムづくりへの案も検討している。
問題の発端となった差別的横断幕への非難を、簡易投稿サイトのツイッターで表明した槙野は「しっかり発言することは大事。自分の立ち位置ばかり気にしてはいけない」と言い切った。誰もが傷ついた今回の教訓を、無駄にしてはいけない。