【なでしこ連載・上】世代交代進めず
「落日のなでしこ…女王衰退の真相(上)」
W杯、五輪といった世界大会で、3大会連続で決勝まで進んだ“元”アジア女王は、リオデジャネイロ五輪アジア最終予選4戦を終え、勝ち点4の4位。五輪出場の可能性が消滅した。11年のドイツW杯優勝以降、なでしこフィーバーを巻き起こした彼女たちが今回、勝ち進めなかった要因はどこにあるのか。3回連載でその真相に迫る。第1回は世代交代に焦点を当てる。
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幾多の輝きを放ってきたなでしこの一時代が終わった。大会前に選手、監督が口にした「持っている力を出せれば勝てる」という言葉は、日本代表の現在位置を見誤っていた証拠ともいえる。
その誤認は、一度世界のトップに立ったからこそ起きたものだ。今回の20人中14人が11年ドイツW杯優勝メンバーで、平均年齢は27・1歳。他国よりも約3歳高かった。FW大儀見は「他国のレベルは上がっているが、自分たちのレベルが上がっていない。現状維持のままだと退化してしまう」と警鐘を鳴らしていた。
急務と言われた世代交代は、進まなかったのではなく“進めなかった”といえる。今大会に向けての1月から3度の合宿全てに招集された選手のうち、落選したのは21歳の村松(日テレ)のみだった。センターバックとサイドバックをこなせるマルチプレーヤー。昨年のカナダW杯にもサポートメンバーで帯同し、連係面に不安もなかった。しかし、選出はされず、逆に2度目の沖縄合宿に追加招集されたドイツW杯優勝経験者の田中がメンバー入り。中国戦では失点に絡んでしまった。
また、指揮官は「国内開催でプレッシャーのかかる予選なので、経験値を生かしてもらいたい」との理由でベテラン中心の選考を行った。そのため、メンバー発表前日の紅白戦で得点した22歳のMF猶本(浦和)が外れるなど、疑問の残る選考となった。
世代交代の遅れに、日本サッカー協会の大仁会長は「新しい若いチームに変えないといけない」と断言し、野田女子委員長も「一からやらなければいけないと思うところはある」と、なでしこジャパン一新の必要性を認めた。盛者必衰。世界一はもう、過去の栄光となった。