“メンタルプレーヤー”川島の復帰で最終予選の流れは変わるか
イラク(6日、埼玉)、オーストラリア(11日、メルボルン)と戦うW杯アジア最終予選の日本代表にGK川島永嗣(メス)が選出された。川島は今季から加入したメスで1軍での出場はなく、6月のキリン杯以来となる代表復帰は、小さくないサプライズとして受け止められた。
バヒド・ハリルホジッチ監督は川島を「メンタルプレーヤー」と称し、「グループの中で特別な役割を担ってほしい。チームに良いスピリットをもたらす。リーダーの一人で経験もある。厳しい戦いの中では彼の存在感が必要になる」と精神的支柱として期待を寄せた。
かつては02年日韓W杯でフィリップ・トルシエ監督が当時34歳のFW中山雅史と同32歳のDF秋田豊を選出し、10年南アフリカW杯では岡田武史監督が、前年に負った右脛の骨折の影響で公式戦出場がなかったGK川口能活をW杯メンバーに抜擢した。その際、岡田監督は「彼の存在感とリーダーシップがどうしても必要」と、今回のハリルホジッチ監督と同様の説明をしている。02、10年とも日本はW杯ベスト16に進出しており、たとえ出場機会がなくともベテランをチームの精神的支柱に据える手法が有効であることは間違いない。
ただ、現在の日本代表の主力は、30歳の本田圭佑をはじめ、33歳の長谷部誠、27歳の香川真司と30歳前後の選手が大半を占めている。25歳の中田英寿、22歳の小野伸二、21歳の稲本潤一が主軸だったトルシエジャパンや24歳の本田圭佑らが躍動した岡田ジャパンとは年齢構成が異なる。十分に成熟したチームのはずだが、それでも「メンタルプレーヤー」が必要なほどチームのメンタルは揺れているのだろうか。
今回の2連戦から、リオデジャネイロ五輪で指揮を執った手倉森誠コーチも復帰した。ハリルホジッチ監督は手倉森コーチに自身と選手を繋ぐ“パイプ役”を託した。語学が堪能な川島も指揮官とフランス語で直接コミュニケーションを取ることが可能で“橋渡し”には適役だ。チーム内の“風通し”にこだわったマネジメントは、選手との微妙な空気の変化を敏感に感じ取っているのかもしれない。
現在日本の正守護神を務める西川周作は、川島の復帰について「プラスに働くことは間違いない。尊敬する先輩ですし、世界大会も多く経験している。マネジメントのパワーは素晴らしいし、自分にない物を持っている。互いに切磋琢磨していきたい」とリスペクトを込めて話した。もちろん川島自身も第3GKで終わるつもりはないだろう。
ハリルホジッチ監督が「(所属クラブで)先発で出られなければGKの3人に入れない」という前言を翻して踏み切った川島の招集。最終予選は1勝1敗の低調な滑り出しとなり、指揮官の進退問題もくすぶり続けている。“メンタルプレーヤー川島”の一手が流れを変えることになるのだろうか-。(デイリースポーツ・山本直弘)