大久保V弾!妻と息子3人の前で決めた
「強化試合、日本4-3ザンビア」(6日、タンパ)
途中出場したFW大久保嘉人(31)=川崎=が、3‐3で迎えた後半ロスタイムに決勝ゴールを奪った。FW香川真司(25)=マンチェスター・ユナイテッド=は後半29分に2試合連続ゴールを奪った。昨年11月のベルギーとの国際親善試合から5連勝でW杯に臨むものの、2点を先行され、3失点を喫した守備には大きな課題が残った。
武器を凝縮した会心の一撃だった。3‐3の後半ロスタイム。失点直後に再開の笛が鳴ると、大久保はゴールへ一直線に走った。
MF青山からのロングボール。落下地点に陣取った相手DFの位置がわずかにずれたのを見逃さなかった。全力疾走からの絶妙のトラップ。そして左足一閃(いっせん)‐。「すごくいいボールがきたからね。トラップも完璧やった」と、納得の一撃だ。
昨年5月に他界した父・克博さん(享年61)と生前に約束を交わした2度目のW杯出場。父に見せたいのと同じように、自らも見せたいものがあった。それはスタンドに駆け付けた莉瑛(りえ)夫人と3人の息子たちだった。ブラジルの治安などを考慮して、観戦するのは今回の米国遠征の2試合のみ。ラストプレーで魅せると、誇らしげにスタンドに向けて拳を掲げた。
試合後に、フェンス越しに話すと、子どもたちは「今日は寝なかったよ!!」と目を輝かせた。2歳の三男・橙莉(とうり)君は観戦中に寝てしまうこともあるが、莉瑛夫人は「3人とも、ちゃんと起きているような時には決めるようなことがありますね。(日本に)帰る前にゴールが見られてよかったです」と、夫を見つめた。
インタビューを受ける父の姿を食い入るように見ていた息子たちには、汗がしみ込んだユニホームを渡した。受け取った長男・碧人(あいと)君は「くさっ!!」と顔をしかめたが、すぐに誇らしげに腰に巻き付けた。
自身にとって08年11月13日以来、2031日ぶりとなる国際Aマッチでのゴールも「過去には興味がない。このまま波に乗っていきたい」と、W杯を見据えた。本大会には妻と子に代わって、母・千里さんが父の遺影と共に駆けつける。
「W杯、楽しみやね。いい準備をしたい」。家族の応援を力に変え、王国ブラジルで躍動する。