【サッカー】新戦略で挑むU22代表

 16年リオデジャネイロ五輪を目指すサッカーのU-22(22歳以下)日本代表候補合宿が25日から佐賀県内で行われる。19日には手倉森誠監督(47)が参加メンバー28人を発表した。初選出された4人には、J1浦和で不動のスタメンを張り、ここまで29試合5得点を挙げているMF関根貴大(20)も含まれており注目を集めた。

 手倉森監督は関根について「浦和だけにU-22のウラワザ(裏技)」と得意のダジャレを交えつつ、「代表のシステム(4-2-3-1)と浦和のシステム(3-6-1)の違いというのもあった。U-22のシステムにどう適応していくのか。手元に置いて、代表にどう関わっていけるのか見極めたい」と選出理由を説明した。

 今合宿には関根に加え、約1年半ぶりに復帰させたMF為田大貴(22)=大分=や初招集のDF中野嘉大(22)=川崎=といったサイドを主戦場とする選手を複数招集した。手倉森監督は「(縦への)突破というスイッチを入れるために、狭い所でも割って入れるドリブルは絶対に必要」と、代表の新たな武器として期待を寄せた。

 来年1月のリオ五輪アジア最終予選(カタール)まで残り3カ月を切った。手倉森監督は11月に予定されている同代表の活動や12月上旬のカタール事前合宿に向けて「ほぼメンバーを固定したい」との考えを示し、佐賀合宿を「新顔と復帰組を織り交ぜた最後の競争」と位置付けた。

 最終予選では中東勢との戦いが焦点の一つとなるため、9月30日から10月14日までカタールで行われていたU-23西アジア選手権に秋葉忠宏コーチ(40)を派遣。手倉森監督もイラン-サウジアラビア戦など2日間で4試合を視察した。同選手権は決勝でイランがシリアを破って優勝を飾り、3位にはカタールが入った。上位3チームは全て最終予選の1次リーグA組に入っており、日本が1次リーグB組を突破すれば準々決勝で対戦することになる。

 中東勢の印象について「体が大きくてコンタクトも強く、フィジカル的なサッカーをしてくる」と語った手倉森監督は「コンタクト(接触プレー)に合わない戦い方が必要になる」と対策を明かした。ある意味、日本代表バヒド・ハリルホジッチ監督(63)が求める“デュエル”(一対一の攻防)を可能な限り回避していくとも取れる。

 当然、球際における戦いの重要性は手倉森監督も承知しており、「戦うところはしっかり戦える準備はする。中東のサッカーにも適応しなければいけない」とも話している。U-22代表にはMF遠藤航(22)=湘南=のように“デュエル”で外国人相手に一歩も引かない選手もいるし、チームとしても7月の親善試合コスタリカ戦(仙台)のように強度の高い試合をこなせることは証明している。

 ただ、A代表が1-1の引き分けに終わった13日の親善試合イラン戦(テヘラン)でも明らかなように、中東勢相手に日本が“デュエル”で優位に立つことはほぼ不可能だ。必要以上にフィジカル勝負に出ても、手倉森監督が言うように「相手の術中に嵌まる」ことになる。さらに秋葉コーチによると、中東勢は「毎試合、両チームに負傷者が出るくらい」当たりが激しいと言い、真っ向から“デュエル”を挑んだ結果、負傷者が続出してしまえばセントラル方式の一発勝負で致命傷になりかねない。

 手倉森監督は「日本らしい戦い方をするべき」とし、「素早い判断とプレーの速さ」を前面に押し出し、ハリルホジッチ監督とは異なるアプローチでアジアと対峙(たいじ)する考えを示した。ボールと人に食い付く中東勢に対し、「うまくいなすことができれば、見ていて楽しいサッカーを見せられる」と自信ものぞかせた。

 合宿最終日の29日に行われるJ1鳥栖との練習試合には、ハリルホジッチ監督も視察に訪れる。手倉森監督率いる若き代表が、A代表指揮官に新たな日本人の可能性を提示できるのか、興味深い一戦となる。(デイリースポーツ・山本直弘)

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