大儀見「澤魂弾」背番10で意地の1点
「サッカー女子リオデジャネイロ五輪アジア最終予選、日本1-3オーストラリア」(29日、キンチョウスタジアム)
4大会連続の五輪を目指す日本代表「なでしこジャパン」はオーストラリアに1-3で敗れ、初戦を飾ることはできなかった。引退した澤穂希さん(37)の背番号10を今大会から背負うことになった大儀見優季(28)=フランクフルト=が前半ロスタイムに追撃のゴールを奪ったが、チームは完敗。勝利には結びつかなかった。
なでしこの新10番として初めてゴールネットを揺らした。2点を追う前半47分、DF有吉-MF阪口とつなぎ、FW大儀見が左足で押し込んだ。「エリア内でDFもGKも焦ってクリアミスが多かったので狙っていた」。代表通算56得点目は、一時は1点差に詰め寄る前半終了間際の追撃弾となった。
昨年限りで現役を引退した澤さんから継承した背番号10。「澤さんが20年以上背負って戦い続けてきてくれたものをしっかり引き継いで、未来につなげていきたい」と決意を示していた。
その重みは誰よりも理解している。04年4月24日、アテネ五輪最終予選の準決勝北朝鮮戦だった。五輪出場権が懸かった大一番。右膝半月板損傷で出場が危ぶまれた澤さんは、痛み止めの注射を打ち患部をテーピングで固めてフル出場し、日本を五輪へと導いた。
当時16歳の大儀見はベンチからその背中を見つめていた。「スタジアム全体が勝てるという空気になった。ワンプレーでスタジアムの雰囲気を作れるというのは本当にすごい」。なでしこの10番はそれほど鮮烈だった。
期するものを持って臨んだ一戦だったが、初戦の重圧も重なり「背番号のことは途中で忘れていた」。テレビのゲスト解説で会場を訪れた澤さんの前で、最前線で体を張り続けた。チームを勝利に導くことはできず。「流れを持って行けなかった。予選は終わったわけではない。切り替えてやる」。前を見据えた表情には、10番の責任感がにじんでいた。