【なでしこ連載・中】響いた不協和音
「落日のなでしこ…女王衰退の真相(中)」
固い絆で結ばれていたはずのなでしこは、内側から崩壊していった。大黒柱だった澤穂希さんが、昨季限りで引退。不在の影響はピッチ内より、外でより大きく表れた。
背番号10を引き継いだ大儀見は、五輪出場が絶望的になった4日の中国戦後「個人としては、負けが意味することは理解して挑んだつもりだったけど、すべての選手が理解していたのかというと、そうではなかった。プロフェッショナルに徹し切れない選手がいた」と、批判の矛先をチームメートに向けた。
この発言に対して、ある選手は「ここ(取材エリア)で発信することじゃない。彼女がチーム内でそういうことを発信しているかというと、できていないと個人的には思う」と首をかしげた。メディアを通してしか聞けなかった同僚の本音に戸惑いを隠せず、不協和音があらわになった。中国戦後、ピッチで一人、天を仰ぐ大儀見に歩み寄ったのは主将の宮間だけだった。
岩渕は「今まではうまくいかなくても、結果がカバーしてくれた」と振り返る。W杯や五輪で勝ち続けている状況では深刻化することがなかった意識の差が、不満となって噴出した。
初戦のオーストラリア戦では、途中交代に対して、ふてくされた態度を取る主力選手もいた。コミュニケーション不足を指摘する選手もおり、雰囲気は下降の一途をたどった。
宮間は「みんなサッカーが好きで、国を背負ってプレーしている。その自覚のない選手はいない。自分はキャプテンとして、味方を傷つけられたくない。自分が何を言われようと、味方を仲間を守りたい」と、チームをつなぎ止めようとしたが、勝利に慣れたなでしこたちは立て直すすべを知らなかった。
一度狂った歯車が再び、かみ合うことはなかった。約8年をかけて築いてきた佐々木体制は崩壊していた。