白鵬、弔い星“綱の心構え”受け継ぐ

 「大相撲初場所7日目」(19日、両国国技館)

 横綱白鵬は動揺と悲しみを抑えて、1敗を守った。尊敬する元横綱大鵬、納谷幸喜(なや・こうき)氏の死去を横綱土俵入りの直前に知った。取組ではその影響を感じさせず、豊響を豪快な上手投げで退けた。白鵬は納谷氏の死去を悼むとともに、17日に見舞っていたことを明かした。横綱日馬富士は魁聖を送り出し、ただ1人全勝をキープした。白鵬と平幕の栃乃若、宝富士が1敗で追う。

 取組に向かう白鵬は尊敬する大横綱の死去を知っていた。支度部屋を出る際に、手を2度大きくたたいた。普段は絶対にない動きで気合を入れた。豊響の突進を受け止めると、回り込みながら豪快な上手投げで、1敗を守った。「土俵入りの時に知りました。気持ちがなかなか入らなかった。でも今日はたくさんお客さんがいる。変な相撲は取れない」。横綱の自覚をにじませた。

 療養中だった納谷氏とは17日に対面していた。「国技館に向かう前に行きました。場所が終わってからゆっくり行こうと思ったが、なぜか分からないが機会があった」。虫の知らせだった。

 そこで「32回の優勝に一つでも二つでも近づけるよう精進してまいります」と話すと、「しっかりやれ」と厳しい口調で激励されたという。約10分間。「体調が悪いと聞いていましたが、しっかりした様子でした。無理をしていると思いました」。それが最後になった。

 白鵬は「角界の父でした。わたしには3人の父がいますから。お父さんのような存在です」と悼んだ。実父、師匠の宮城野親方(元幕内竹葉山)、そして横綱の心構えを教わった納谷氏だ。

 横綱に昇進した際は、あいさつに出向いた。すると「横綱になるのは、年齢に関係なく宿命だ。わたしは横綱になったとき、引退することを考えた」と教えられた。横綱は成績が伴わなければ引退するしかない。「怖い気持ちになりました」と受け止めて、現在の優勝回数は23にまで至った。

 白鵬は打ち出し後、大嶽部屋へ赴いて亡きがらと対面した。家路につく際は「2日前に会えて良かった。父のような存在だった」とあらためて故人をしのび、大横綱の魂は確かに受け継いだ。

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