技能賞を獲得する力士は出現するか

 13日から大相撲秋場所(東京・両国国技館)が始まる。今場所は21~23日が3日連続の祝日となっており、その前の土日と合わせると5連休のシルバーウィーク。前売り券の売れ行きも好調で、5場所連続となる15日間満員御礼の可能性は高い。8月に各地で行われた夏巡業も盛況で、2場所連続36回目の優勝を目指す横綱白鵬(宮城野部屋)を中心に展開される優勝争いも、かなり白熱しそうだ。

 ところで気になる話題がひとつある。現在、技能賞は5場所連続で該当者なしが続いており、平成以降に限れば殊勲賞が09年1月場所から6場所連続で該当者なしだったケースに次ぐ“ワースト記録”となっている。7月の名古屋場所では、12勝3敗の好成績だった嘉風(尾車部屋)が敢闘賞とともに技能賞でも候補として挙がったのだが、敢闘賞は獲得したものの技能賞は過半数には届かず落選した。

 今のところ技能賞に関しては、昨年の9月場所でベテラン業師の安美錦(伊勢ケ浜部屋)が獲得したのが最後となっている。実はその安美錦が授賞する前も4場所連続で該当者なしだった。つまり14年1月以降の10場所のうち9場所で技能賞は該当者なしなのである。

 実は3月の春場所でも安美錦は技能賞候補に挙げられたのだが、勝ち越しを決めたあとに右ひざを負傷して11日目から途中休場(最終的な成績は8勝3敗4休)してしまい、休場した力士が三賞を獲得したという前例がないため見送られている。休場力士が三賞を授賞できないという規則が明文化されているわけではないが、さすがに15日間を皆勤することが前提という“暗黙の了解”があるようだ。

 ちなみに当時関脇だった元大関貴ノ花は、1970(昭和45)年11月場所で7勝8敗と惜しくも負け越したものの、連日の健闘が称えられて会場である福岡スポーツセンターから特別に表彰されている。3横綱(大鵬、玉の海、北の富士)4大関(大麒麟、清国、琴桜、前乃山)には全敗していながら表彰されたということは、勝ち負けよりも相撲内容を高く評価されたということ。かなり異例のケースといっていいだろう。

 現役力士で技能賞を獲得しているのは以下の通り。

白鵬2回

日馬富士5回

鶴竜7回

琴奨菊4回

稀勢の里1回

豪栄道3回

 横綱・大関陣はさすがの実績。特に鶴竜の7回は鶴ケ嶺の10回、栃錦の9回、琴錦(現中村親方)の8回に次ぐ史上4位タイという、歴代の技能力士に匹敵する数字を残している。

関脇以下では

安美錦6回

豊ノ島4回

栃煌山2回

妙義龍5回

朝赤龍2回

時天空1回

千代大龍1回

 面白いのは妙義龍で、5回の三賞獲得はすべて技能賞のみという徹底ぶり。白鵬から金星をゲットした13年1月場所では7勝8敗と負け越したのが痛恨で、勝ち越していれば当然殊勲賞を獲得していただろう。

 何とか6場所連続で該当者なしは避けてほしいもの。名古屋場所で2横綱を破る活躍だった栃煌山、旭天鵬、若の里の引退で関取最年長になったがテクニックは健在の安美錦、もちろん妙義龍の鋭い取り口も見逃せない。まだ技能賞を取っていない力士では、父譲りの速攻が魅力の佐田の海、左四つの型がある遠藤にも期待がかかる。そして17場所ぶりに幕内に復帰した朝赤龍にもぜひ頑張ってほしい。まわしを取ってからの技能は34歳になっても全く衰えていない。この秋は磨き上げた力士たちの技能を堪能してほしい。

(デイリースポーツ・北島稔大)

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