琴勇輝 館内声援も「ホウッ」封印
「大相撲夏場所・初日」(8日、両国国技館)
立ち合い直前に発する「ホウッ」の叫び声を封印した新関脇琴勇輝は、碧山にはたき込まれ黒星発進となった。横綱白鵬は隠岐の海を寄り倒して幕内勝ち星を879勝とし、歴代1位の魁皇に並んだ。ハイレベルな優勝なら綱とりの可能性もある大関稀勢の里は盤石の相撲で妙義龍を寄り切った。新十両の宇良は黒星スタートとなった。
新関脇の名にふさわしい立派な土俵態度だった。琴勇輝はルーティンとしていた立ち合い直前の「ホウッ」を発せず立ち、碧山の巨体をもろ手で押した。相手に右へ回り込まれ、上体が流れたところをはたき込まれて黒星発進となったが、表情はさわやかだった。
取り組み前には満員札止めの館内から「ホウッを頼む!」「ホウッをやって!」とルーティンを支持する声援も飛んだが、振り返ることはなかった。「頼むという声が飛び交っていた。でも、そういう人たちには相撲で返していくしかないです」。毅然とした口調で決意表明した。
部屋の先輩琴奨菊の「琴バウワー」に続き一部で人気を博していた「ホウッ」だったが、先月の力士会で審判部首脳から「目に余る」と注意を促され「言われたことを受け止めることが大事」と正常に戻すことを決めた。見守った友綱審判部副部長(元関脇魁輝)は「審判部の言ったことを理解してくれたのはよかった」と褒めた。
ルーティンをやめた新関脇場所は黒星スタートも「特に気持ちの変化はなかった」と心の整理はついている。不安材料は場所前に発症したぜんそくの影響による調整遅れ。「ここまでだいぶ調整できたし、もうせき込むことはなくなった」。正しい所作は相撲の魅力のひとつ。生まれ変わった琴勇輝が相撲で夏の両国を盛り上げる。