勢、新関脇初の結びで横綱鶴竜撃破
「大相撲夏場所・5日目」(12日、両国国技館)
新関脇の勢が、全勝だった横綱鶴竜を小手投げで撃破し、3日目の大関照ノ富士に続く上位食いで2勝目を挙げた。横綱戦の勝利は初場所5日目の鶴竜戦以来、2度目。横綱白鵬は小結魁聖を寄り切り、5連勝。稀勢の里、豪栄道の両大関を含めた3人が全勝を守った。
大歓声がこだまし、乱舞する座布団に勢は驚いた。「数えられないくらい飛んでいた。すごい光景。(33本の)懸賞金も自己最多」。初めて結びの一番で横綱を倒した快挙をかみしめた。
鶴竜の手つき不十分などで3度目の立ち合い。左を差され、前みつを取られたが慌てなかった。攻め込まれた土俵際で豪快な逆転劇。小手に振り回し、土俵下に投げ落とした。
「横綱に勝ててうれしい」。その思いに違いはないが、横綱に初勝利した初場所に比べて、「余裕があった」のが実感だった。
3日目の照ノ富士に続き、全勝を止めた。はね返されてきた上位の壁だったが、今は「負けても長く相撲が取れる」と、成長の手応えがある。
日本人離れした194センチ、165キロの大器は覚醒。「思い切って当たって、体が対応できる」と、上位でも通用するようになった。八角理事長(元横綱北勝海)は「強いね。押されない。横綱を裏返しにするんだから力がついた」と目を細めた。
昨夏から部屋の周りを約1時間散歩することが日課だ。「信号待ちで、さびの部分でこぶしを握ると、隣の人がびくってすることも」。角界屈指の美声の持ち主は、夜、好きな歌を口ずさみ、取組で高ぶった気持ちをリセットしている。「この位置で勝ち越さないと認めてもらえない」。新関脇場所のリサイタルは、まだ序章だ。