藤浪、得意じゃないのに…持久走1着
阪神の新人合同自主トレ4日目が13日、鳴尾浜で行われ、別メニュー調整中のドラフト6位・緒方を除く新人5選手が3500メートル持久走に挑んだ。ドラフト1位の藤浪晋太郎投手(18)=大阪桐蔭=は、後続の位置から冷静なレース運びで終盤にトップに躍り出て1着でゴール。「長距離は得意ではない」と話した右腕だが、持ち前の持久力とプロ必須の“したたかさ”も見せつけた。この日で第1クールが終了した。
197センチルーキーの大きなストライドが先頭に迫る。右翼ポール手前の2300メートル付近。ギアを入れた藤浪が先頭の小豆畑を鮮やかに抜き去った。黄金ルーキーがトップに立った瞬間だった。
圧巻は最終周だ。和田監督が見守ったバックネット裏関係者ブース前の3400メートル付近。最下位の田面を抜き去り、周回遅れにさせると、2着の北條に10秒差をつけて、13分57秒でゴールした。
「しんどかったです。あまり長距離は速い方ではないですけれど、様子を見ながら、自分のペースを保って走りました」
グラウンド約9周半の3500メートル走を涼しい顔で駆け抜けた。最後まで軸のぶれない美しいフォーム。計算されたペース配分。序盤は小豆畑、北條と先頭集団を形成。ただ一度も先頭に立たず、抜け出すタイミングをうかがった。中盤から徐々にペースアップし、トップに立つとゴールまでは優雅な“独り旅”だった。
和田監督はこの冷静なレース運びを高く評価した。「性格が見えた持久走。その中でも藤浪の持久力というか、最後の方まで2、3番手につけて、ポンとラストスパートしたけど、あれはピッチングにもつながる」。
続木2軍トレーニングコーチも「高校でしっかり練習してきたのが分かる。4日間のトレーニングで疲れもあったと思うが、だんだんペースが上がっていったし、(タイムは)まだ出ると思いますよ」と目を見張った。
前夜、第1クール最終日に持久走があることを知ったルーキーたちは、寮内で盛り上がった。
「誰が速いのかな?」
「藤浪が1位だろ!」
「自分はそんなに得意じゃないです」
藤浪は謙そんしていたが、本番で遠慮はしなかった。惜しくも2着に敗れた北條は、「速いくせに(控えめに)言ってるなあと思っていました。藤浪はもったいぶるんですよ(笑)」と証言。「大股でせこい。勝てるかなと思ったんですけど…」と悔しがった。
高いポテンシャルに加えて、プロの世界を勝ち抜く“したたかさ”も持ち合わせる右腕。規格外のパフォーマンスで第2クールも周囲を驚かせる。