福留、虎初マルチ!貫禄の2点同点打
「オープン戦、阪神6‐4ヤクルト」(12日、甲子園)
自然体の調整だ。メジャー帰りの35歳が涼しい顔で快音を奏でた。阪神は2点ビハインドの六回、大和から始まる好打順。3者連続安打で5番につないだ。無死満塁。手負いの増渕が投じた内角への速球に反応した福留が同点の2点打を右前へ。一振りで結果を導き、改めて存在感を際立たせた。
「自分のタイミングが合えば打つしね。そこは自分で割り切っているよ。きょうはタイミングが合ったから。悪い感じではないけど、もうひとつ打球が上にあがってくれたら。1打席目も詰まったけど、いい詰まり方。あれがライトスタンドに行ってくれればいいね」
四回には二塁の左を抜く中前打。練習試合、オープン戦を通じて初の複数安打を記録した。二回に村中から放った右飛は芯を外したが、角度のついた打球。スイング、打球の軌道に納得しながら、調整を進める。まだ影を潜めている本塁打の予兆も出てきた。
「勝負どころでの配球の読み、バッティングの技術は大したもの。こちらもそういうものを期待しているけど、本人がやってくれることで、チームにいい影響を与えてくれている」。和田監督は全幅の信頼を置いて、相乗効果を確信している。
堅実な守備も健在だ。五回。宮本の放った右中間への打球が浜風に流され、長打コースに。大和のバックアップで回り込んで対応した福留がワンバウンドで二塁へストライク返球。走者をくぎ付けにする好守を見せた。「きょうのような風はこれからもある。大和とコミュニケーションをとりながら、二塁までいかせないようにしないと」と、日本一深い右中間の対策にも抜かりはない。
侍ジャパンが米国切符をつかんだWBCは全試合チェックしている。「鳥谷があそこまで感情を表に出すのは見たことがない。それがあの大会」と話す。王ジャパンが世界一に輝いた06年大会の準決勝、決勝で殊勲打を放ち英雄になった記憶を胸にしまい込み、虎でプロ第3章を迎える。冷静に穏やかに、本番を待つ福留の面持ちが頼もしい。