小嶋7回1安打0封 555日ぶりに笑った
「阪神1‐0ヤクルト」(20日、甲子園)
7年目の阪神・小嶋達也投手(27)が7回を1安打、無失点。六回まで被安打ゼロ。ひょっとして快挙も…と期待を抱かせた圧巻の内容だった。555日ぶりの白星に笑みが広がる。チームは3連勝。サヨナラ勝利後次戦の連敗も7でストップした。チーム防御率2・11はセ界No.1。まだまだ行け!トラは止まらない。
ふぅ~と、深く息を吐いた。唯一最大のピンチは七回。2死一、二塁と走者を背負い、打席には得点圏打率・429の岩村。2ボール1ストライクからの4球目。小嶋が意を決したように投じた直球は小宮山のミットを大きく浮かせた。3ボール。従来ならここで崩れるが、この日は違った。
緩いスライダーを外いっぱいに決めフルカウントにすると、さらに2球同じ軌道の変化をつけ一ゴロに封じた。自ら劣勢を立て直し、本塁を遠ざけた計115球。7回0封で555日ぶりの勝利をたぐり寄せ、プロ2勝目を挙げた07年以来、6年ぶりに甲子園のお立ち台に上った。
「やっぱりすごく気持ちいい。長かったけど、また、ここに来られて良かった。長い間、結果が出ていなかったので、今回ダメなら次はもうないかなという、強い気持ちを持って臨んだ」
不振で先発ローテを外れた岩田の代役で巡ったチャンス。七回の劣勢は持ち球だった110キロ台の緩いスライダーを交えてしのいだが、バッテリーを組んだ同級生の小宮山が「きょう知った」という「新球」が、アクセントになった。
七回1安打無失点と好投した4月7日のウエスタン・中日戦で、ブルペンで温めていた高速スライダーを初試投。「これは使えるかも」と手応えをつかんだ。「ずっと欲しかった」という待望の軌道を、決め球ではなくカウントを稼ぐ武器として投球に幅を持たせた。
自己改造は立ち位置にも及んだ。踏み込むプレートの位置を三塁側に変え、インステップしていた悪癖を修正。打者の視界を変えることで既存の印象をガラッと変えた。
「小宮山と試合前に、やってやろう!と言って臨んだ。サインには首を振らなかったし、あいつを信じてミットを目がけて投げた。ファームで取り組んできたことは、いい方向にいったと思う」
七回先頭のバレンティンに安打を許すまで無安打投球。ノーヒットノーランの期待も高まったが、11年以来勝ち星のなかった左腕に、そんな色気も余裕もなかった。
鳥谷と並んだお立ち台では、視線を上げパパの顔でほほ笑んだ。スタンドでは両親と夫人、そして2人のまな娘、萌愛ちゃん(3つ)、結愛ちゃん(1つ)が観戦。ウイニング球の届け先を問われると「とりあえず、持って帰ります」と照れ隠し。かけがえのない感慨を胸に、小嶋が野球人生の第2章を踏み出した。