代走田上が本塁憤死…判断ミスが命取り
「中日1-0阪神」(25日、ナゴド)
歓声は一瞬。悲鳴と失意が猛虎の頭上を覆った。痛恨の判断ミス。土壇場に巡ってきた絶好機が、コンマ数秒の遅れで霧散した。阪神の代走・田上が犯した致命的な過ち。足のスペシャリストが、与えられた任務を遂行できず、タテジマは敗れた。
1点ビハインドの九回。先頭の福留が右前打。和田監督は代走・田上を告げた。これまで何度も抜群の打球判断で1点をもぎ取ってきた福留の経験値より、田上のスピードを重視した指揮官の判断。1死一、二塁から、代打・関本の左前打で悲劇は起こった。
詰まりながら、左翼芝生に命を求めた打球。スタートを切った田上が、二、三塁間で一瞬立ち止まった。再スタートから本塁を突いたが、好返球と谷繁のブロックの前に憤死。わずかの迷いが命取りになった。
「接戦というか、この球場ではこういう試合になる。ミスをした方が負ける。負けるべくして負けた」。虎将の唇を伝う怒の色。同点‐逆転のシナリオを崩壊させたシーンが脳裏を駆ける。15失点の大敗を喫した初戦以上の悲そう感が漂った。
首から下げたタオルで田上は何度も顔をぬぐった。「もうちょっと早く判断していれば、セーフになれたと思う」と声にならない声を絞り出した。確実に竜のシッポをつかめていた。それだけに、振り返りたくないワンシーンになった。