新井兄V弾!2戦連発 能見のため…
「巨人2‐5阪神」(6日、東京ド)
ドラマチックな放物線が左翼スタンドの黄色い波に消えた。勝ち越しのホームを踏みしめた殊勲者のがい旋。ベンチで待ち受けた阪神の後輩たちの仕打ちは手荒かった。外野を指さす得点時のパフォーマンスは、皆知らんぷり。いたずらの主は1人しかいない。新井は爆笑しながら「おまえ、コノヤロ~!」と西岡にヘッドロックをお見舞いした。
同点の五回。2死走者なしから、2試合連発となる新井の3号ソロが決勝弾となった。「あまり変なことを考えずに打席に入った。カウント2‐2からフォークを見送って、次は真っすぐかなと思っていた。能見が復帰して初めての登板だったし、チームが勝ったことも、能見に勝ちがついたことも良かった」。フルカウントから笠原の速球を読み切り、エースを援護射撃した。
前日、東京ドームで行われた長嶋茂雄氏と松井秀喜氏の国民栄誉賞授与式をニュースで見た。長嶋氏との忘れられない記憶がある。02年2月。プロ4年目の春季キャンプで、サプライズが待っていた。02年限りで巨人監督を勇退した長嶋氏が広島のキャンプ地、日南市を訪問。ミスターが新井の直接指導を申し出て、天福球場のメーングラウンドでノックを受ける機会に恵まれた。
新井は「緊張していて、掛けられた言葉を思い出せない」と言うが、「テレビで見たままの方。『バ~ン』とか『ダ~ッ』とか、感覚的なフレーズで指導していただいた」。駒沢大時代の4年間でわずか2本塁打の男が記録した265本目のアーチ。大砲の礎を築いた広島時代に触れたミスターの教えは、引き出しの奥底にしまってある。
試合後、西岡がちゃめっ気たっぷりに“いたずら”を弁明した。「あれは金本さんからの指令ですよ」。昨季限りで現役を退いた金本知憲氏からは新井は愛情を込めて「虎のミスタープロ野球」と呼ばれる。打撃の波が激しいことも、思いも寄らぬミスを犯すこともある。不器用でも、がむしゃらな姿がファンの胸を打つ。「絶好調?まだ…かな」。ドラマを起こす男の本領はこれからだ。