マートン激走憤死…捕手の状態案じる
「ヤクルト2‐4阪神」(12日、松山)
阪神・マートンの額にはジワリと汗がにじんでいた。1点を追う八回、無死二塁。4番として期待されるのは追いつくための一打だけ‐。松岡と対した1球、1球には極度の緊張感が漂った。そしてフルカウントからの8球目、浮いたフォークを見逃さなかった。
コンパクトに、マートンらしくスイングした打球は痛烈なライナーとなって田中浩の頭上を越えていった。二塁走者の鳥谷が生還する貴重な同点適時打。直後に代走が送られてベンチへ退くと、三塁側を埋めた松山のファンから惜しみない拍手が降り注いだ。
5試合で19打数2安打と調子に陰りが見えていた11日の試合前、水谷打撃コーチが助っ人に対して初めてメスを入れた。引っ張る意識が強く、打撃が雑になっていたため「シンプルに。いいときは内側からバットが出ている」とアドバイスを送った。スイングルームにこもり、鏡と向かい合って入念にチェックした。前日の猛打賞に続き、5年ぶりの6連勝に直結する同点適時打と復調気配を見せたが、試合後、その表情はさえなかった。
四回、1死一、三塁から藤井彰の中飛で本塁に突入した助っ人は、捕手・田中雅と激しく交錯。六回の第3打席では初球に背中を通過するビーンボールを投げられた。直後に抗議したマートンは「(投球の意図は)相手に聞いてほしい。それよりも審判が警告を出さなかったことが分からない」と語気を強める。
「捕手をケガさせようと思ってやったわけじゃない。どうしても得点が欲しかったし、去年、捕手のブロックに足から滑って膝を詰めて(痛めて)しまった。ああやってぶつかったのは野球人生で初めて」。故意のラフプレーではなかったことを強調し、途中交代した田中雅の状態を案じた。 母の日ということもあり、早朝に米国の母へ電話し、ギフトカードを贈った。常に全力でプレーする心優しき助っ人が、チームを波に乗せて交流戦に突入する。