メッセ完投星!モデルチェンジに成功
「広島1-3阪神」(5日、マツダ)
大切な思い出のマウンドが、再スタートの場所となった。最後まで一人で投げきり、ようやくつかみ取ったのは5月23日のロッテ戦以来の7勝目。「今日をターニングポイントにしたいね」。106球の無四球での完投劇は、阪神・メッセンジャーの笑顔で締めくくられた。
「藤井さんが試合中にたくさん話しかけてくれて、二人の話が一致して投げられていた」
初回こそ1点を奪われたが、二回1死二、三塁のピンチを無失点で切り抜けると、そこからゼロ行進。前回の登板からは、投球フォームを修正。中西投手コーチから、体重移動に関して「一塁側に流れてしまっていたから、左のつま先に体重が乗るように」とアドバイスを受けていた。
フォームが安定し、緩急を自在に操れたことが結果につながった。和田監督が「モデルチェンジ。2ストライクまではコントロール重視で追い込んでから腕を振ってた。違うものを出してくれた」と評した新たな姿。内面にも、勝利に燃える要素は確かにあった。
今年初のマツダスタジアムとなった4月5日、グラウンドに出ると広島・石井琢朗内野守備走塁コーチから握手を求められた。理由は分かっていた。昨年9月30日、石井コーチの本拠地での「引退試合」に登板。2安打されたが、勝利のために最終打席を右飛に打ち取る全力勝負を演じて、完投勝利を挙げていた。
メッセンジャーが「素晴らしいバッターだったし、球場の雰囲気も素晴らしかった。忘れられないね」と振り返った記憶。握手の後には石井コーチから、全力勝負に対する「感謝」を伝えられた。マツダスタジアムでの完投勝利は、その一戦以来2度目。偉大な打者の「最後の投手」となれたことは、今も右腕の大きな誇り。この日の快投は決して偶然ではない。
「野手の皆さんがよく守ってくれた。(最近は)調子自体は良かったし、勢いに乗っていきたいね」とメッセンジャー。三回には中前打で出塁し、3点目のホームも踏んだ。勝てない日々が続き、登板前日の「勝負メシ」としていた好物のラーメンも今は封印。華麗な変身を遂げ、再び走りだす。