0封デビュー!ポスト球児へ遼馬がゆく
「阪神0‐6DeNA」(13日、甲子園)
たどり着いたあこがれのマウンドで、力の限りに腕を振り抜いた。阪神劣勢の八回。松田の名前がアナウンスされる。1軍初登板は4万4087人が見守る甲子園だった。
波佐見高3年の春に見た景色は、プロでは違った。「人の多いところで投げるのは初めてなので、緊張しました。(高校野球の)甲子園とは違いました」と、19歳のあどけなさを見せた。
それでもマウンドでは、剛腕がうなりを上げる。先頭・石川に投じた初球は、真ん中145キロのストレート。「打たれてもいいから、思いっきりいこうと思った」と快速球を投げ続けた。
石川に粘られた7球目には自己最速タイの149キロを計測。変化球を挟み、再び最速をたたき出した。最後は外角146キロ直球で空振り三振。続く山崎は三邪飛。モーガンに右前打を許し、ブランコを迎えた。
表情は崩さなかったが、恐怖が体を駆け巡った。「怖かったけど思い切りいこうと決めた」。意を決して、立ち向かった。真ん中高め146キロで空振りを奪う。3球目は、あわや本塁打という特大のファウルを打たれた。4球目に代走・荒波が二盗死でチェンジ。ここまですべて直球勝負の4球で、ハマのキングに一歩も引かなかった。
後ろから見守った西岡が、その投げっぷりをたたえた。「負けてて試合が決まっている中で、ああいう姿勢を見せてくれたのはプラスになる」。敗戦の中での力投が、虎の戦力として認められた証しでもあった。
2月、1軍キャンプ中に右肩関節痛に見舞われた。復帰までに3カ月を要した。リハビリの過程で、剛球に耐えうるフォーム改造も着手した。それでも「自分の持ち味である真っすぐにこだわっていきたい」と、信念は貫き通した。
復活の手助けをしてくれたトレーナーに感謝した。たどり着いたマウンドで1回無失点。「まだ1試合ですが自信になりました」。“球児2世”と期待される2年目右腕の20球。新たな火の玉伝説が、幕を開けた。
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