狩野復活マルチ!育成からはい上がった

 「DeNA8‐3阪神」(4日、横浜)

 序盤でつまずいた。先発の鶴が2回6失点KO。打線も劣勢をはね返せず、和田阪神が完敗した。そんなゲームで存在感を示した男がいる。狩野恵輔外野手(30)だ。代打で登場し、自身1軍初の中堅守備にも入り、4打数2安打。昨オフの育成契約から今夏、支配下選手に戻ってきた背番号99が、虎の新たな活力となる。

 どのヒットよりも、狩野が放った中前打にファンが沸いた。惜しみない拍手を送り続けた。数奇な運命に踊らされ、プロ野球選手として崖っぷちから1軍の舞台に帰ってきた男。2本のクリーンヒットが持つ意味。それは単なる個人の記録だけにとどまらない。

 昨年10月、狩野は戦力外通告を覚悟していた。必死の思いで1軍に上がっても、悪夢のように襲ってくる腰椎椎間板ヘルニアの症状。昨季、1軍で劇的な本塁打を放ちながらも、故障により定着できなかった。オフに提示されたのは育成選手としての再契約。背番号は120へ変わった。それでも「球団に残してもらえただけでもありがたい」。感謝の思いを口にし、それが形となって表れたのは三回だった。

 無死一塁から鶴の代打でコールされると、加賀美が投じた初球、99キロのスローカーブをきれいに中前へはじき返した。「直球を狙って、高めに抜けてきたから打った」。その裏からプロ入り初めて中堅の守備に就き、五回にも再びスローカーブを左前へ運んだ。少ないチャンスをモノにし、マルチ安打で復活を印象づけた狩野。だが試合後、本人に感慨はなく「これからを考えれば左投手を打ちたかった」と厳しい表情を貫く。

 六回の第3打席、左腕の大原と対したが直球に詰まらされ右飛に倒れた。現有戦力を見ればチャンスは左投手に限られてくる。1軍で居場所を作るためにも、打ちたかったあの打席。それは自分のためだけではない。愛するチームへの思いも背負っている。

 昨オフ、育成選手として残してもらった意味を狩野は考えた。移籍組の選手が増える中、生え抜きとしてやるべきことは何なのか‐。腰痛に悩まされ、背番号99を失っても「こんな俺でもあきらめなければ可能性があることを若い子に分かってもらえれば…」。懸命の努力で故障、そして支配下への壁を乗り越えた狩野。自分のためだけじゃない。後輩たちへ伝えたかった思いが、2本のヒットに凝縮されていた。

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