神様去ってミスタータイガース復帰で…

 2013年10月13日、セCSファーストステージ広島戦、現役最終打席。阪神一筋22年の桧山進次郎が派手な一発をファンの記憶に残してバットを置いた。

 こちらデイリー一筋25年。四半世紀スポーツ新聞の紙面を作っている。振り返れば一面の見出しを考えるときほど楽しく心地よい時間はない。それも、ここ一番で打ったときの紙面作りは格別である。「神様・桧山、代打弾」。その見出しは今後は使えない。

先日、神戸市内でタクシーに乗ったときのことだ。桧山引退特集号のタブロイド版を小脇に挟んでいるのをみた運転手がこう話しかけてきた。「なんか来年から楽しみが減りますわ。代打・桧山というコールがラジオから流れてくるとアナウンスだけで興奮しましたわ」。興奮したのはこの運転手だけではないだろう。阪神ファンにとって、ここで打ってくれという場面で、その欲求を満たしてくれる選手だったからだ。

 桧山は「代打の神様」と呼ばれた。その前は八木裕がそう呼ばれていた。他の球団で「代打の神様」と呼ばれる選手はいない。当然、彼らが打てば「神様」という大見出しが躍る。普段はめったに使うことのない「神様」という文字、それでもなぜかためらうことなく使えた。それ以前はどうだったのだろう。入社前にさかのぼるが阪神には、代打の切り札として川藤幸三、遠井吾郎がいた。でも神様という見出しはついていなかった。

 なぜ、2人だけが特別視されたのか。阪神のチーム記録を調べた。

<通算代打起用回数>桧山進次郎757、遠井吾郎525、八木裕463、桑野議423、川藤幸三352

<通算代打安打>桧山進次郎158、遠井吾郎108、八木裕94、川藤幸三85、桑野議84

<通算代打打点>桧山進次郎111、八木裕98、遠井吾郎96、真弓明信86、川藤幸三73

<通算代打本塁打>桧山進次郎16、八木裕16、川藤幸三9、遠井吾郎8、真弓明信8

 これらの記録の上位に神様の名前を見つけることができた。特に通算代打本塁打で2ケタを記録したのはこの2人だけ。それも当然で、桧山、八木ともに代打に回る前はレギュラーでクリーンアップを打っていた長距離砲だった。つまり「代打の神様」の称号はホームランの期待が持てる選手だけに与えられるものなのかもしれない。クライマックス・シリーズの生涯最終打席でホームラン。まさに神様とは、負けていてもその一振りで球場の雰囲気を変えられる存在だ。

 さて、前出のタクシー運転手が心配するように来年から楽しみが減ってしまうのか。八木の背番号3を譲り受けた関本賢太郎が桧山の跡をつぐのか。その関本の代打通算成績は起用回数266、217打数53安打6本塁打39打点。「切り札」になり得ても「神様」という見出しを使うのはためらってしまう。

 15日、阪神は掛布雅之氏と契約を結んだ。次世代を担う主軸の育成をお願いしたそうだ。掛布氏といえば、ミスタータイガース。その称号を与えられた選手はほかに、藤村富美男、村山実、田淵幸一しかいない。「神様」が去った阪神に「ミスタータイガース」が25年ぶりに帰ってくる。だからといってすぐに「ミスタータイガース」や「神様」という見出しにふさわしい選手が出てくるとは思わないが…。願わくば、縁あってタテジマのユニホームを着ている限り、彼らの「タイガース愛」「タイガース魂」を少しでも受け継いでほしい。

(デイリースポーツ・永井英次)

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