「掛布劇場」緊急ファンサービス

 「阪神春季キャンプ」(2日、安芸)

 キャンプ初の日曜日を迎えた安芸で『掛布劇場』が開演した。阪神・掛布雅之DCが急きょノッカーを務めた。平田勝男2軍監督が「愛情たっぷりや」という強烈なノックを乱れ打ち。さらに、連日の打撃投手役も。300人の観客も拍手喝采で大いにわき上がっていた。

 シートノックが終わった午後1時。掛布DCが、突然バットを握った。「3カ所全員ノック」が行われるはずが、「4カ所」に変更。急きょ、三塁側ファウルゾーンに、ノック場所が設けられた。

 「(平田2軍)監督が『日曜で暖かいし、お客さんが来ているから(ノッカーを)やってあげてくださいよ』って言うから」

 ノックを受けるのは北條、阪口、一二三。掛布DCはノック前に「北條飛び込めよ」とニヤリ。この言葉が合図となり、掛布ノックがスタートした。

 1球目。北條にゴロを打つはずが、いきなりライナーに。これには北條らも「えーっ」とブーイング。掛布DCはバツが悪そうに「ゴロを打つのがヘタだな」と苦笑いした。

 それでも慣れてくると、捕れそうなギリギリの打球が増える。それを見た平田監督は「掛布さんの愛情たっぷりやな」と3選手にハッパをかけた。

 次第に冗舌になっていく掛布DC。一二三が簡単な打球に「ラッキー」と言えば、「ラッキーだ、この野郎」。北條のファインプレーには「うまいね~北條」。ダイブした阪口が打球をこぼすと「てっちゃ~ん」。打球と言葉で選手を乗せて、愛の108球ノックは、あっという間に終了した。前のめりで見守ったファンから、大きな拍手がおこった。

 掛布ノッカーの発案者である平田監督は、ファンサービスと説明した。「僕らの現役時代は掛布さんと岡田さんが、日曜になると特打で打ち合ったり、掛布さんと僕が三遊間で特守したりと、ファンに喜んでもらったもんだ」

 さらに、選手への相乗効果も期待した。「違う雰囲気でノックを受けることで、選手も変わってくるからね」。自身も負けじと日高らに126球を打ち、球場を盛り上げた。

 1カ月に及ぶ厳しいキャンプ生活。「雰囲気づくり」が重要となる。初日の夕飯では、掛布DC自ら、天ぷらを揚げて選手や監督らに振る舞ったという。グラウンド内外で、掛布劇場が周囲を魅了している。

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