使えば打つ!新井、意地の“補欠弾”
「巨人12‐3阪神」(30日、東京ド)
広島時代の同僚、大竹の描く新井像ではなかったはずだ。初球の変化球をファウルした後の2球目。阪神・新井は外寄りに沈んだスライダーに反応した。グンと伸びた飛球が中堅左の観客席に消えた。
「ずっと取り組んできたことができて良かった。待っていない球でも自然に反応できる。いいと思う」。開幕2打席目でのシーズン1号は、本塁打王に輝いた05年の初打席弾に次ぐスピード弾。ここまで温存された「補欠」が意地を見せた。
バットを従来より約2センチ長くし、打撃フォームは43本塁打した05年のDVDとにらめっこしながら復元ではなく進化を目指した。昨季まで直球待ちで手が出なかった変化球を今年はどんどん振る。新スタイルの真骨頂だ。
出番は突如訪れた。四回に代打で出場するとその裏から約1年9カ月ぶりに三塁を任された。今年のオープン戦で一度も就いたことのなかったホットコーナーだ。緊急配置に「いつ以来かな…。久しぶりで緊張したよ」と、顔をこわばらせたまま振り返った。
本塁打のあと、三塁ベンチ前で和田監督の出迎えを受ける新井の表情は険しかった。2月からの実戦打率・436を残しながら、開幕補欠。チーム事情で純粋な競争がなかったことも事実だ。絶好調の補欠…こんな肩書はもったいない。