上本が劇的サヨナラ打!虎5割復帰や
「阪神6‐5DeNA」(10日、甲子園)
阪神が今季初のサヨナラ勝ち。5‐5の九回、2死一、二塁から上本博紀内野手(27)が自身初のサヨナラ打を放ち、チームは勝率5割に復帰した。新外国人の呉昇桓投手(31)は来日初勝利を挙げた。試合は乱戦。拙攻もあったが、最後の最後に甲子園が歓喜に沸いた。
何が起こったのか理解できなかった。懸命に食らいつき、打球を見ることなく一塁ベースを回った上本。わき上がる大歓声、ベンチから飛び出すチームメートを見て初めて気づいた。プロ入り初めてのサヨナラ打‐。グラウンドで笑わない男が仲間たちに囲まれ、見たこともないような満面の笑みを浮かべる。
「がっつくというか、何でも食らいつこうと。それでボールだったら仕方ない」。場面は同点の九回2死一、二塁だった。これまで2三振を含む4打席凡退。さらに脳裏をよぎったのは8日の第1戦、1点を追う九回2死一、三塁で見逃し三振に倒れた。
「あの悔しさもあったんで初球から振りたかった」とソーサが投じた初球、外角低めの直球に食らいついた。打球は浜風に負けることなく、勢いよく伸びていった。右翼の梶谷がダイビングするも届かず、芝生に弾んだ白球。中学生以来と振り返る劇打で、チームは今季初のサヨナラ勝ち、そして5割復帰だ。
「本来の持ち味である勝負強さが出た」と目を細めた和田監督。プロ入り後、何度も何度もカベにぶち当たった。チャンスをつかみかけても西岡という大きな存在が立ちはだかった。さらにゲーム中のアクシデントで負った左足首の故障、そして手術。そんな苦難の状況でも上本は絶対に弱みを見せなかった。
昔からたとえ痛めた箇所があっても決してトレーナー陣に打ち明けることはなかった。ひたすら隠し通して試合に出続け、絶対に他人に弱みを見せることはなかったという。170センチに満たない小さな体で屈強な男たちに勝つために‐。「この世界は結果がすべてなんで結果を残さないと。結果ですべて判断される」と言い切れる“強さ”が、土壇場で最高の結果へ実を結んだ。
チームが本調子でない中、5割に戻して11日から王者巨人を迎え撃つ。「この勢いに乗って必死に頑張ります」。その先頭に立つ小さな背番号4の存在感は、日に日に大きくなっている。