「広島２-８阪神」（１５日、マツダ）

　広陵の後輩野村よりも、マスク越しの石原の顔がゆがんだ。阪神・新井良の２号３ランが試合を決めた。低めのシュートを右中間席まで運んだ殊勲者は拳を握りしめ、足早にベースを回った。

　同点で迎えた五回。鳥谷の左中間二塁打で勝ち越し、なお２死二塁の場面で広島バッテリーはマートンとの勝負を避けた。一塁が空いている状況で、最少失点に抑えるべくリーグ３冠王を歩かせ、新井良との勝負を選択。広島ベンチからすれば、これが凶と出た。

　目の前で敬遠気味の四球。となれば、燃える男。それでも、新井良は冷静だった。「そう（敬遠に）なると思う。あの場面で打てて、晋太郎に勝ちがついて良かった」。昨秋のＣＳファーストＳ以来となる広島戦は新井良にとって、雪辱を期す舞台でもある。

　広島が阪神に連勝し、球団初のＣＳファイナルＳ進出を決めた昨年１０月１３日の夜のこと。広島正捕手の石原は同僚にポロッと本音を漏らした。「なぜ良太は出なかったのかな。正直、助かった」

　開幕４番を任された１３年、新井良は自己最多の１１９試合に出場するなど、新境地を開いた。だが、ＣＳ２試合は三塁の先発を坂に譲り一度も打席に立つことなく終幕を迎えた。相手先発は前田、バリントン…右投手との相性が悪い。ベンチの判断を受け入れるしかなかったが、広島バッテリーは一発のある新井良を短期決戦で厄介者だと感じていた。

　この日は右投手の野村を打破した。二回にチーム初安打を浴びせ、七回にも右腕の九里から追加点の起点となる左前打を放った。１０日のＤｅＮＡ戦から１試合置きの猛打賞。「それはたまたま。しっかり準備して試合に臨みたい」。規定打席にわずかに足りないが打率は・３９０まで上昇した。三塁は不動。もう、投手の左右を問われることはない。