岩貞1勝!V戦線の夏、虎ローテに光
「DeNA2-5阪神」(17日、横浜)
阪神のドラフト1位・岩貞祐太投手(22)=横浜商大=が、2度目の先発でうれしいプロ初勝利を挙げた。5回2/3を投げ4安打2失点。DeNAの助っ人に連弾を浴びる洗礼も受けたが、大学時代を過ごした横浜での記念星となった。巨人が敗れ、首位とのゲーム差は1・5となった。
肌になじんだ風が左腕の心を和らげ、そして力を与える。岩貞のデビュー2戦目は、横浜商大時代に幾度も歓喜のために汗を流し、敗戦の悔しさに涙を落とした横浜スタジアム。思いが染み込んだマウンドに、プロの足跡をしっかり残した。
「マウンドは今まで見てきた風景だったので、落ち着いて投げられた。ここで勝ってよかった」。初回に3点の援護を受けた試合。先頭・石川に左前打を浴びるが、後続を落ち着いて仕留めた。
緊張で自らを見失ったデビュー戦(10日・広島戦)とは違う。「それほど緊張もなかった」。懐かしい景色が、その背中を押した。
3連戦初戦の15日、午前中に宿舎を出て、ある場所へ向かった。そこは数え切れない思い出がつまった横浜商大のグラウンド。佐々木監督にも伝えなかったサプライズ訪問だ。
原点回帰。躍動感に満ちた大学時代を思い出しながら、緊張の糸を少しずつほどく。そして監督を前に岩貞は「もう同じ失敗はしません」と宣言した。
その言葉通りの投球を見せる。三回2死三塁の危機も、梶谷をスライダーで空振り三振。走者を背負いながら、粘りの投球でゼロを並べた。六回2死から連続本塁打を浴びて降板。だが100球の球数制限がある中で、5回2/3を2失点。堂々のプロ初勝利だった。
「やっぱり長かったですね。けがをしていた時期を考えると…」
苦難の道のりを支えたのは友の存在。春季キャンプで左肘を痛め、長いリハビリを強いられた岩貞に、梅野が声を掛ける。寮の部屋で野球の話を何度も重ねた。そして‐。
「1軍で一緒にやろう」。互いに交わした約束。つらく長い時に、ともに大学日本代表に選ばれた友の誓いに勇気づけられた。その梅野とつかんだ初勝利。岩貞は「捕手のサイン通りに投げれば結果はついてくると思った」と梅野をたたえた。
ここがスタートラインだ。優勝を争うチームで先発5番手の期待も大きい。「与えられた試合に全力で投げたい」と宣言した岩貞。時折強く吹き荒れていたのがうそのように、横浜の爽風が左腕のほおを優しくなでた。