ゴメス「40発打つ」遅れて合流即宣言

 「阪神春季キャンプ」(8日、宜野座)

 母国ドミニカ共和国でパスポートを盗まれ来日が遅れていた阪神のマウロ・ゴメス内野手(30)が、1軍キャンプに合流した。宜野座ドーム内でフリー打撃を行ったあと、和田監督と話し込み、40本塁打を宣言。阪神の助っ人では過去に到達者は3人。球団史上8人目の大台到達を約束した。

 陽気なドミニカンがボスの指令を真顔で退けた。

 和田監督「今年は35本だな!」

 ゴメス「ノーノー!40本、打ちますよ!」

 薄暗いドームの真ん中で2人は話し込んでいた。離れ際、和田監督は少し驚いた表情で、問い直すように4本の指を立てた。指揮官は母国で不慮のアクシデントに見舞われた助っ人を明るく激励するつもりだった。昨季の26本塁打から9本の上積みを指令したつもりが、予期せぬリアクションが返ってきた。

 遅れてきた主砲が謝意を込め、40本塁打宣言だ。「昨年以上に頑張れよと言ったらその上をいく、と」。和田監督は頬を緩めて報道陣に会話の中身を明かした。阪神の40発打者は過去に藤村、田淵、ブリーデン、掛布、バース、金本、ブラゼルの7人のみ。ゴメスが大台に届けば10年のブラゼル以来、球団史上8人目の到達者となる。あいさつ代わりのスイングを見れば快挙への期待感が膨らんだ。

 キャンプ合流初日、ゴメスは打った。午後からドーム内でストレッチ、キャッチボールで体を慣らし、打撃ケージでスタンバイ。オマリー打撃コーチ補佐の投げる球を49球、コンパクトなスイングで広角に打ち返した。「感覚としては悪くなかったんだけど、まだまだ練習が必要だよ。明日以降、状態が上がるように練習を続けていきたいね」。本人は冷静に現状を見つめた。室内だけに軌道を測ることはできないが、30本以上は安打性で、うち10本は狙ったように本塁打性の角度をつけた。

 現地時間1月26日の朝、自宅駐車場で車上荒らしに遭い、パスポート、就労ビザを盗まれた。急きょ球団の渉外担当がドミニカ共和国へ渡り、来日手続きに奔走。前夜沖縄入りし、7日遅れで宜野座キャンプに合流した。

 この日は練習前にチームメート全員の前で「ゴメンナサイ」と謝罪。時差ぼけ解消のため午前中は近隣施設でプールトレを行ったが、昼過ぎから周囲の視線を独占しながら迫力のデモンストレーション。40発の約束を果たせば、7日間の遅れなんて皆忘れてくれる。

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