「阪神春季キャンプ」（９日、宜野座）

　阪神のドラフト３位ルーキー・江越大賀外野手（２２）＝駒大＝が９日、シート打撃で左腕・島本から左中間へ豪快な一発を放った。２打席連続適時打を放った７日のケース打撃に続き、今度は直球に対する強さと確かなパンチ力を示した。「三振でもいい」という打席内での“割り切り”は新人離れしており、課題である変化球への対応力が上がれば、貴重な１軍の戦力になりそうだ。

　とてもルーキーが打つ打球ではなかった。低い弾道のまま、力強く左中間へ伸びていった江越の打球。失速することなくスタンドに飛び込むと、ファンは一斉に沸いた。とてつもない新人が入ってきた－。あの弾道を見た誰もがそう思っても不思議ではなかった。

　左腕・島本と対した第３打席。カウント１－２からの５球目だった。やや内寄りに来た１４０キロのストレートを力強いスイングではじき返した。２度目の実戦形式で飛び出した一発。和田監督は「内角の難しいところを、あの弾道で運べるのは力がある。面白そう。低めのボールにしっかりバットが止まったし」と目を細める。

　確かに、ルーキー離れしているのは結果だけではない。簡単に２ストライクと追い込まれた直後の３球目、「低めは捨てていました」と完全に割り切って膝元のスライダーを難なく見極めた。続く４球目は真ん中付近に直球が来たものの「力んでしまった」とミスショット。ここで勝負あったの展開だが、江越は違う。

　「力を抜いて、インパクトの瞬間だけを考えていた」と約３０秒のインターバル間に残像を脳裏から消し、後悔の念を捨て去った。追い込まれても「当てに行くのではなく、振り切る。三振でもいいと思って振りました」と打席内で攻撃的姿勢を失わなかった。

　初めての経験となるプロのキャンプ。レベルの高い生存競争の中にいても、「大学時代から打席での決め事はやってました」と自分のスタイルを崩していない。例年、若手はまず１軍のレベルに圧倒される。そして第２クールからは蓄積疲労に、結果を追い求める重圧も重なり、徐々に自分を見失う。

　だが江越には割り切れる心の強さがあり、「鳥谷さんや福留さんは甘い球を一発で仕留める。自分も課題としてやっていかないといけない」。トップクラスの選手と自分を客観的に比較して吸収する力もある。

　今後、課題になるのは変化球への対応。「この１本を自信にしてやっていきたい」と語る背番号２５は、プロの高いハードルを乗り越えられる可能性を秘めている。