福留様“進撃の連発”で今季初5連勝

 「阪神5-3DeNA」(27日、甲子園)

 まるで再現VTRのようだった。阪神の福留孝介外野手(38)が六回に同点ソロ、八回に勝ち越しソロと、2打席連続でバックスクリーン右へたたき込んだ。中日時代の07年以来となる2打席連続アーチで、チームは今季初の5連勝。甲子園での連勝も8に伸ばし、6月の月間勝ち越しも決めた。これで貯金は4月4日以来の2。このまま首位を突っ走れ!

 福留は狙い澄ましていた。同点の八回2死無走者。「2アウトでランナーもいないし、いい場面なのかなと…」。初球だ。田中の142キロを迷いなく強振すると、アゲンストの浜風を蹴散らす弾道がバックスクリーン右までグ~ンと伸びた。甲子園が福留賛歌に酔う。神様、仏様…虎党にとって、どれだけあがめても惜しくないプラチナアーチだった。

 「前の打席を追わないようにしているけど、悪い気分ではなかった」。1点劣勢の六回に井納から起死回生の10号同点弾を中堅右へ放った。VTRのような決勝の軌道。「風で厳しいかなと思ったけど、1本目より感触は良かった」と移籍初の2連発を振り返った。

 2打席連発はメジャー移籍前年の中日時代07年4月の広島戦以来だが、実はその年、将来の虎入りを暗示する出来事があった。Vを争う強竜打線の3番を担った男は同年7月中旬に右肘痛を発症し、戦線離脱。渡米して遊離軟骨の除去手術を受けた。結局、日本シリーズ出場もかなわず傷心のシーズンとなったわけだが、と同時に米国西海岸で忘れられないシーンと遭遇する。

 術後のリハビリ中、俳優の渡辺謙、南果歩夫妻とドジャースタジアムで試合観戦したときのことだ。果歩夫人に飛んできたメジャーリーガーのファウルボールを福留が左手でキャッチ。熱烈虎党のラストサムライから「彼は妻の恩人。阪神に来てほしい」とラブコールを送られていた。

 「手術のことがあったから、ボールを捕ってからテレビに映らないように必死に顔をそむけたよ。謙さんには阪神に来てからよく心配してもらっている。普段なかなか連絡とれないけど、頑張っている姿を見せないと…」

 最終回。決勝弾に沸く真っ黄色の右翼席が大合唱で守備に就くヒーローをたたえた。「選手にとってこれ以上の幸せはない。あそこ(右翼)で歓声を感じられることは本当に幸せ」。この日は初打席から全打席で得点に絡む活躍を見せた。リーグ戦再開後は、3番で打率・455と、もはや神がかっている。

 チームは今季初の5連勝で首位をキープ。6月の月間勝ち越しを決め、甲子園の連勝も8に伸ばした。「首位?楽しいです」。お立ち台の背番号8が梅雨空を押し上げるようにVロードを照らした。

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