“江越神話”9連勝!打点挙げれば負けん
「広島2-8阪神」(6日、マツダ)
阪神・江越はチーム宿舎の自室で静かに目をつむった。朝8時15分。70年前の8月6日、広島市に原爆が投下された同時刻に恒久平和を祈り、野球に没頭できる幸せを胸に刻んで特別な舞台に臨んだ。
平和と核兵器廃絶を訴える「ピースナイター」として開催された記念試合で、もうひとつの被爆地出身者が輝きを放った。三回。1点を追加しなお2死一、二塁の好機で泥くさい打球が左翼で弾んだ。仕留めたのはフルカウントからの8球目。背番号25が内角球をこん身のスイングで引っ張り、追加点を刻んだ。
「打った1球前のワンバウンドした変化球をしっかり見送れたことがいい結果につながったと思います。詰まった打球でしたけど、ランナーをかえすことができて良かったです」
長崎県南島原市出身の江越にとって原爆がナガサキを襲った8月9日とともに、8・6への思い入れも強い。
「70年ということではなく、毎年です。きょうもしっかりと黙とうしました。ずっとやるようにしています」 戦禍を知らない22歳だが「記念の日」は鎮魂の念を全力プレーに込めてきた。自身の成長は郷土への恩返しにもなる。
フルスイングが真骨頂だ。和田監督から「三振指令」を出されるほどの天性の持ち主。球宴後これで13戦連続スタメンを続けるが、鳴尾浜で掛けられたひと言が勇気の源になっている。
「お前の座右の銘はなんだ?思いきり振ることだよな。細かい配球を考え出すと、どうしても小さくなってしまう。変化球の空振りはオッケーだから。上(1軍)に行っても小さくなるなよ」
現役時代、同じ背番号25を背負った浜中2軍打撃コーチの激励は今も頭の片隅に置いている。江越が打点を挙げればこれで9戦全勝。黄金新人の神話は「平和の日」を新たな起点にする。