金本新監督が決意「執念植え付ける」
阪神の金本知憲新監督(47)が19日、大阪市内のホテルで就任会見に臨み、決意表明を行った。10年間優勝から遠ざかるチームの再建と勝利を命題に掲げ、勝つために、低迷するチームに「執念を植え付ける」と断言。意識改革を常勝の絶対条件に掲げた。契約年数は3年で年俸は1億2000万円(推定)。背番号は未定。
オリーブグレーのスーツは決意表明の証しだ。夕方4時半。猛虎の第33代監督に就任した金本知憲はテレビ、新聞のカメラ計52台の放列を浴びながら緊張した面持ちで登壇した。250人の報道陣、全国の阪神ファンが注目した第一声は「ええ~…」。緊張で一瞬の間を置いた後、言葉を選びながら、素直な気持ちを吐き出した。
「不安と希望がかなり入り交じっています。しかし今は希望というか、やってやろうという強い気持ちがあります。最初は不安のほうが大きかったのですが、新聞、テレビ報道を見たりして、何とかこのチームを強くしたい、本当に今はそれしか思っていないです」
1日に監督就任要請を受け、悩み抜いた末、17日に受諾の意思を南球団社長に伝えた。3度の交渉で計10時間、球団側と納得いくまで対話を重ね、同社長の並々ならぬ熱意に押され、一大決心した。
「結構、悩んだのですが、球団、フロントの方々の一回(チームを)壊してでも立て直したい、という熱意を意気に感じました」
10年間優勝から遠ざかる過渡期のチーム再建を託される任務はいわば貧乏くじ。交渉中、幾度も「荷が重すぎます」と固辞したが、覚悟を決めた以上は逃げ道を探すつもりはない。理想の監督像を問われると「勝たせる監督です」と即答した。
「チームを再建し、しかも結果を出すのはかなり厳しい。時間がかかるかもしれないけれど、時間に甘えないように、できるだけ早く結果を出したい」
12年の現役引退後、ネット裏から古巣を客観視してきた。他に劣らぬ戦力を保有しながら決まって夏の終わりに失速する。なぜ、勝ちきれないのか…。あくまで「外部の意見」と前置きしながら、明確に弱点を指摘した。
「気持ち、やる気、試合に挑む気、何が何でも勝つんだという気持ち、執念が少し欠けていたんじゃないのかな…と思っています」
技術ではなく無形の力、「執念」の注入はたやすくない。それでも、47歳の新人監督は強い語気で断言した。
「執念は植え付けないといけない。精神的なことを軽く見てはいけないし、何をするにもそこが絶対に基本。ただひょうひょう淡々とこなしていくような試合を僕は許さない」
現役時代、決意を秘めた節目には必ずグレーのスーツで臨んだ。晴れの会見後、カメラマンから「笑って!」とリクエストされた金本新監督は唇をかみ、首を横に振った。「笑顔は無理です」。鉄人率いる阪神が「戦う集団」に生まれ変わる。