藤原、超一流の意識を次世代に伝えたい
今オフ、11選手が阪神を退団した。新たな人生へチャレンジする虎戦士の思いをお伝えする。
プロ野球選手として駆け抜けた6年間は、藤原正典投手(27)にとってかけがえのない時間だった。甲子園のマウンドから見える景色は、絶対に忘れることのない大切な宝物。突き進む次の人生に迷いはない。球団に来季の契約を結ばない旨を伝えられた10月29日から、新たな挑戦は始まっている。
09年度のドラフト2位で阪神に入団。「右も左も分からないまま、目の前のことに一生懸命でした」とがむしゃらに腕を振った1年目の10年は、1軍戦24試合に登板した。守護神・藤川につなぐ中継ぎとして防御率3・60。7月20日の広島戦(甲子園)では延長十回1死から登板し、その裏にチームがサヨナラを決めて初勝利。「興奮しましたね」。歓喜の瞬間は格別だった。
阪神の一員として奮闘したルーキーイヤーの記憶。その中で、藤川の野球に取り組む姿勢が最も印象に残る。
「リリーフカーに乗って、その日の球児さんはマウンドに行かずホームの打席の方に行ったんです。足場をならしていたんですよね。そこで、普段は恐れ多くて話しかけられないんですけど、試合後に聞きに行きました。『バントでイレギュラーする確率があるだろ?投手として、準備できることはしないといけない』と。すごいなぁ、と思いましたね」
超一流選手の意識を感じ、それが自身の活力となった。14、15年は1軍戦の登板がなかったが、試行錯誤を繰り返しながら左腕を振り続けた。11月10日の12球団合同トライアウトでは打者3人を無安打2奪三振。独立リーグなど複数のチームからのオファーを受けた。しかし「NPBしか頭になかった」と断った。悔いはない。新しい志が芽生えていた。
「大学の職員になるために、今は絶賛就活中です。僕は(立命大の)野球部だったので時間がなかったのですが、就職活動とかのサポート体制がもっとしっかりしていれば、学生たちの進む道は広がっていくと思うんです。そこに就きたいですし、僕の経験を伝えていけたらいいですね」
プロ通算58試合で1勝0敗、防御率3・12。憧れの世界では、苦しいことの方が多かった。「一つ勝てたし、レベルの高い場所を経験できたのはプラスですよ」。だが、今ではいい思い出。第2の人生は若者の夢を後押しすること。藤原はゆっくりと歩みを進めている。
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