田上、代走の醍醐味味わった阪神6年間

 「元虎戦士新たな旅立ち 神機一転」

 今オフ、11選手が阪神を退団した。新たな人生へチャレンジする虎戦士の思いをお伝えする。

 あまりに突然で非情な通告だった。10月19日。宮崎から関西に戻ったばかりの田上健一外野手(28)は、球団から来季の戦力外を通告をされた。

 「正直、びっくりしました。何でだろうと…。でも、もう戻れない。球団の考え方なら、次に向けてやるしかないと思いました」

 混乱する頭の中を整理しながら、懸命に前を向いた。11月に合同トライアウトを受験。クラブチームや独立リーグから声がかかったが、NPBからのオファーはまだない。

 「代走」という特殊なポジションで勝負の世界に生きた。転機となったプレーがある。13年4月25日の中日戦(ナゴヤドーム)。1点を追う九回1死一、二塁から代打関本の打球が左前にポトリと落ちた。ところが二走田上は一瞬、スタートをためらう。本塁憤死。翌日、2軍降格を命じられると、自分を見つめ直した。

 「失敗をして難しさが分かりました。これからは巨人の鈴木さんのようなポジションでやっていこうと。レギュラーで出たい気持ちもありましたけど、30歳前後で代走に集中しようと思いました」

 足のスペシャリストとしての心構えを磨くため巨人・鈴木の著書を読みあさった。代走に必要なのは「経験とスキル」だと学んだ。13年は5盗塁。14年は自己最多51試合に出場し、日本シリーズ初出場も果たした。

 「日本シリーズに出られずやめる選手もいるわけですし、そういう大舞台で、大事なところで出場できたことは良かったです。気持ちも入っていました」

 昨年のソフトバンクとの日本シリーズは阪神6年間の中でも印象的なシーンだという。第5戦、0-1の九回1死満塁。代走出場した二走・田上は西岡の一ゴロで三塁へ。捕手の一塁送球がそれるのを見ると、果敢に本塁へ突っ込んだ。ホームベースに体を預けセーフをアピールしたが、判定は打者走者の守備妨害…。まさかの幕切れに立ち尽くしたが、プロ最高峰の舞台で、あらためて代走の醍醐味(だいごみ)を味わった。

 今季は開幕1軍入りしながら死球に見舞われ戦線離脱。わずか9試合の出場に終わった。このオフは巨人・鈴木に弟子入りする計画を立てていただけに、悔いは残る。

 「ずっと野球をやってきて、緊張感がある中でやっていたので、そこから離れるのは考えにくいです」

 体は万全。9月には長男・光希くんが誕生し、守るべき家族も増えた。育成選手から上り詰めた自負もある。新しいフィールドさえ見つかれば-。全力でスタートを切る準備は整っている。

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