【野球】猛虎“最悪の事態”への備えを

 41、30、42、32、37、42、27、41、32、40…。ここ10年のセ・リーグ優勝球団における、クローザーのシーズンセーブ数だ(数字は新しい順)。先発、中継ぎ、抑えと、分業がより明確化された近代野球において、クローザーの役割は絶大。その出来がペナントレースの成績に直結するといっても過言ではない。

 昨年12月、阪神ファンにとってはショッキングな事実が明るみに出た。絶対的守護神の呉昇桓が海外での賭博容疑で、韓国検察から取り調べを受けるというもの。結局、残留を要請していた球団は、事態の決着を待たずして、交渉を打ち切るしかなかった。

 呉昇桓の抜ける穴は絶大だ。在籍した2年間で通算80セーブを挙げ、来日初年度から2年連続で最多セーブのタイトルを獲得。大きなケガはなく、連投もこなし、金本監督は就任直後に「呉昇桓ありきで計算しているから」と絶大な信頼を口にした。その構想が白紙に戻ったわけだから、ダメージは計り知れない。

 ただ、もともと大リーグ志向のあった呉昇桓の退団に備えていた球団はその後、パドレスから速球派のマテオの獲得に成功。他にも、同じくスピードボールを武器とするタイガース傘下3Aのドリスの獲得も目指している。かつての絶対的守護神・藤川も4季ぶりに加入したが、先発としての調整を命じられており、現時点では助っ人2人が代役候補だ。

 しかし、クイックなど細かい動きも要求されるのが日本野球の特色。剛速球があるからといって、それだけで相手打線を抑えられる保証はない。球界全体で見ても、これまでにもクローザーを期待された新助っ人が、シーズンが始まってから失格の烙印を押された例は多々ある。キャンプ、オープン戦だけでは適正を判別しきれないのも難しいところだ。

 そこで最も危惧されるのは、マテオ、ドリスの2人ともクローザーには不適格という事態が発生した場合だ。その時は他の投手をクローザーにせざるを得ないが、福原は年齢的なことを考えると負担が大きい上に、配置転換すると今度はセットアッパーが手薄になる。松田、歳内ら抑えの資質を備える若手はいるが、圧倒的に経験が足りない。

 ペナントを制するためには、安定したクローザーの存在が不可欠であることは冒頭で述べた通り。マテオ、ドリスの2人に固執せず、例えばキャンプの練習試合やオープン戦で藤川、松田、歳内といったクローザーに回る可能性のある投手をセーブのつく場面に登板させるなど、最悪の事態に対する備えも必要であろう。(デイリースポーツ・五島大裕)

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