ドラ1高山、ランニング“プロ初弾”
「阪神紅白戦、紅組7-3白組」(28日、宜野座)
阪神のドラフト1位・高山俊外野手(22)=明大=が28日、紅白戦に紅組の「6番・左翼」で先発出場。六回2死一、二塁から“プロ入り初本塁打”となる中堅右へのランニング3ランを放った。開幕1軍に向けてこの上ない結果となったが慢心はなし。真の伝説はこれからとばかりにアピールを続ける。
この男、やはり並のルーキーではない。“プロ初弾”が、しかもめったに見られないランニング本塁打。盆と正月が一緒に来たような話だが、試合後は「たまたまいい形でああいう打球がいったので、これからそれが普通になるようにしたい」と実にあっさり。小学6年以来という“珍事”にも、大げさに喜ぶことはなかった。
野球の神様がこの瞬間を見たかったのか。高山の一撃は、いくつもの条件が重なり合って生まれた。六回の紅組は1点を取ってなお2死一塁としたが、2番・板山は三塁へのゴロ。本来ならここでチェンジのはずだった。
しかし、スピンのかかった打球を陽川が捕り損なった。一、二塁となって打順はクリーンアップを迎えたが、金本監督の計らいで鳥谷、ゴメス、今成の打席はスキップ。6番の高山に3度目の打席が回った。
その初球。二神の高めツーシームを捉えると、痛烈なライナーが中堅右を襲った。前進守備の中堅・横田が左翼寄りに守っていたこともあり、打球はフェンスに到達。この間に全力疾走でダイヤモンドを駆け抜けた。
この打席までの1軍の実戦成績は、9打数1安打と芳しいものではなかった。だが「結果が出てないからといって消極的になることはない」と初球からスイング。中日・佐藤スコアラーも「分かっててもなかなかできない」と新人離れした精神面に言及した。
金本監督は「まず横田のミスでしょう」としながらも「あれだけグッと伸びる打球を打てるというのはいいこと」と称賛。前日の練習試合後、高山にスイングの始動を早めるようにと初の打撃指導を行い、そのこともドラマの誕生に貢献した。
二回には藤浪と初対戦。「1回首を振ったので真っすぐで来ると思った」と初球の153キロに手を出したが三ゴロ。「1軍で活躍するためにはエース級の投手も打たないといけない」と課題に挙げた。常人なら一生忘れない思い出となりそうな一日。ただ、野球の神様に愛された申し子にとっては、いつも通りの一日だったようだ。