金本監督初勝利 亡き恩師に届け
「阪神7-3中日」(26日、京セラドーム大阪)
選手を信じて迷わず攻め抜き、そして勝った。阪神・金本知憲監督(47)が、開幕2戦目で初勝利を挙げた。指揮官の積極采配に打線が応えて、11安打7得点。先発能見ら投手陣も踏ん張った。投打がかみ合った快勝劇。「超変革」を旗印に掲げる金本阪神が、確かな一歩を踏み出した。
初勝利の瞬間、金本監督は2度手をたたいた。「最強メンバー」と呼ぶコーチ陣と握手を交わし、グラウンドに駆け上がった。最後を締めたマテオが危うくウイニングボールを観客席に投げ入れそうになると、能見が「ボスに!」。2月の対外試合初勝利では「要らん」と記念球に目もくれなかったが、本物の勝利球は「サンキュー」と、大事そうにポケットにしのばせた。
「まあ…それなりにうれしいですね。ウイニングボール?どうしましょうか。これから考えますよ」
感慨を問われると、少しはにかみながら胸をさすった。逆転で初星が逃げた開幕戦から一夜明け、午後5時4分に待望の瞬間が訪れた。それでも「マテオに集中していた。どんな配球で左打者を打ち取るのか…。初勝利の感覚はなかった」。4点差の快勝も最後の1球、下駄を履くまで全神経を研ぎ澄ませた。
迷わず攻めた。2点優勢の五回。ゴメスの3ランでリードを広げてもエンドランを駆使し、超攻撃で追加点を奪った。六回は高山の積極走塁、横田の暴走をともに「気持ちを買いたい」とたたえた。
信念の1勝を報告したい恩人がいる。昨年11月30日。広島に帰省し、6年前に病で他界した三村敏之元広島監督の墓に参った。目を閉じると、天国からの激励が鼓膜に響いた。
お前の好きなようにやれ。応援しとるけぇ-。
密着ドキュメントで同行するTVクルーはすぐに被写体の異変に気付いた。教え子に戻った47歳は「すまん。カメラとめてくれ!」と顔を覆った。
何度ぬぐってもあふれ出る涙…。「もう一度、一緒に野球をしたかった」。かなわなかった夢を胸にしまいこみ、縦じまに魂をささげる決意を固めた。
赤ヘル時代、叱咤(しった)を超え、何度も罵倒された。それでも最大の恩義を「ミムさん」に感じている。ただ冷静にこうも言うのだ。「三村監督は勝てなかったから…」。
「これという監督像はない。三村さんのいいところ。(山本)浩二さんのいいところ。それぞれイイとこ取りしたい。悪いところは排除してイイところは盗む。その結果、失敗するか、成功するか、信頼されるか。どうなるか分からない」
昨秋の就任会見で理想の監督を「勝たせる監督」と即答した。在任5シーズンで2位が最高位の三村政権を「理想」とは表現しない。その存在を超えることこそが供養、報恩になると感じている。
「きのうの敗戦なんて、なんとも思っていない」。金本監督の超負けん気が虎の歴史を伝統に変える。