【鳥越規央】リードした時の継投に弱点
ひと回りの対戦を終え、10勝9敗(1分け)となんとか勝ち越している阪神。チーム打率・239ながら得点88はリーグ2位と、そつのない攻撃力が光ります。
しかし、これまでの戦いぶりを分析すると、その足を引っ張りかねない弱点も浮き彫りとなりました。
それは内野守備と継投策。特に継投策に関しては、連日歯がゆい思いをされた方も多いことでしょう。今回はセイバーメトリクスでここまでの救援投手陣を分析してみました。
昨年の救援防御率は4・11とリーグワースト。今年は3・63と改善しているように見えます。
ただし、昨年はビハインド時に登板した投手の防御率が5点台と大炎上しましたが、リード時、同点時に登板する投手の防御率は2点台。3点差以内での勝率・567はリーグ1でした。
これは安藤、福原、呉昇桓の3人を勝ちパターンのみに起用することで、僅差での勝利をもぎ取る力を蓄えていたことを示しています。
今年のデータでは、リード時に登板する投手の防御率が5・03、同点時でも6点台と大炎上。味方のリードを守り切れなかったり逆転されたりするケースが5試合も発生しています。3点差以内での勝敗も4勝6敗と負け越しています。
その要因の1つとして考えられるデータがあります。
救援投手が登板して対戦する1人目の打者への被打率は・310で、阪神のチーム被打率・258に比べてかなり甚大なのです。これはある意味「継投失敗」を示すデータとも言えそうです。
例えば、引き分けに終わった3月31日の神宮でのヤクルト(3)戦において、七回に3人が1/3ずつという贅沢な継投を行いました。
先頭打者・左の上田に高宮をぶつけましたが、上田の対左腕は過去3年連続して3割超え。安打で出塁され、歳内も代わりばなを山田に適時打を浴び、左の雄平のために登板させた高橋も、実は昨年の対左被打率が良くなく(※1)、結局安打を許しました。
ブルペンを管理するスタッフの皆様には、データを今一度吟味していただければと思います。
改善策としては、個人的な見解ですが【1】ドリスの昇格【2】奪三振率9・51、K/BB(※2)が4・17の能見投手の配置転換-などが効果的ではないかと考えます。(統計学者)
※1=対左被打率は・279。対右被打率・244に比べて悪い。
※2=奪三振と与四球の比率。数値「4」以上で優秀と判断される。
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鳥越規央(とりごえ・のりお) 統計学者。大分県中津市出身、46歳。野球統計学(セイバーメトリクス)を駆使した著書は『本当は強い阪神タイガース』(筑摩書房)『スポーツを10倍楽しむ統計学』(化学同人)など多数。所属学会はアメリカ野球学会、日本統計学会など。JAPAN MENSA会員。