セ最下位…データが示す二遊間守備指標

 「3番・大和」は超変革の象徴なのでしょうか?これまで41試合で31通りの打順組み替えを実施しているタイガース。多くの戦力を試しながらの勝率5割キープは素晴らしいと言えます。もっとデータがそろいましたら、セイバーメトリクスによる最適打順についても考察してみます。

 さて今回は、前回のコラムで課題の一つとして挙げた内野守備を斬ってみましょう。

 データによると、投手がゴロで打ち取っている打球をアウトにできている割合が75・61%で、これはリーグ最下位。また、併殺が取れるチャンスで実際に併殺が取れているのは5%以下です。内野安打を許す確率もワースト。

 もちろん、ゴロの転がったコースが良かったり、投手の力が勝るためボテボテのゴロが多くなったりという要因はあるのかもしれませんが、それを差し引いても目を覆う惨状には違いありません。

 その状況を裏付けるデータがあります。セイバーメトリクスの新たな守備の指標として生み出された「UZR」(※1)は、失策だけでなく、守備範囲の広さも加味して選手を評価するもの。そのUZRの二遊間の数値が、セ・リーグで最下位なのです。(データ引用:1.02 Essence of Baseball,Delta Inc.)

 それだけ二遊間の守備範囲が狭くなって、ゴロが外野に抜ける確率が大きくなっていることがわかります。

 名誉のために言っておくと、2013年までは鳥谷のUZRはリーグNo.1だったのですが、右膝の故障があった14年以降はワーストに転落しました。

 昨年の失点はリーグワースト2位(550)でしたが、チームFIP(※2)はリーグでも2位の優秀さを示しています。これは失点の要因に守備力が大きく影響していることを物語っています。

 今年もチームFIP3・34とリーグ2位の力を誇る投手陣。その足を引っ張らないような内野守備の改善は急務です。

 ただし、時系列データを見ると4月下旬を境に改善傾向が見られます。実はそのあたりからセカンドに大和が固定、サードも北條、今成が入っています。

 UZRといった守備の評価は、実は年齢の若さと相関が高いと言われています。若トラたちがいろんな打順やポジションで試されている時期ですが、今後も際どいところに手の届くチャレンジングなプレーで、投手を盛り立ててください。(統計学者)

 ※1=UZR 「守備でどれだけの失点を防いだか」を表す指標。「10」で優秀、「マイナス5」で平均以下。

 ※2=FIP 「被本塁打」「与四球」「奪三振」だけで算出される、守備力によらない投手の力を示す指標。

  ◇     ◇

 鳥越規央(とりごえ・のりお) 統計学者。大分県中津市出身、46歳。野球統計学(セイバーメトリクス)を駆使した著書は『本当は強い阪神タイガース』(筑摩書房)『勝てる野球の統計学』(岩波書店)など多数。所属学会はアメリカ野球学会、日本統計学会など。JAPAN MENSA会員。

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