金本監督ぼう然…落球ポロリでサヨナラ
「広島4-3阪神」(26日、マツダスタジアム)
誰がこんな幕切れを予想できただろう。1点リードの九回、同点に追い付かれてなお2死満塁で、左中間への飛球を追った阪神・中谷将大外野手(23)と俊介外野手(28)が交錯。まさかの適時失策でサヨナラ負けを喫した。3連敗で首位・広島とは10・5ゲーム差。最下位・ヤクルトに0・5ゲーム差に迫られた。早ければ30日にも自力優勝の可能性が消滅。金本阪神がいよいよ苦境に立たされた。
ゲームセットから40分後、ベンチ裏で応急処置を受けていた俊介が担架でロッカールームへ搬送された。右足だけユニホームをひざまでまくり上げ、左腕で目を覆う姿をトレーナー陣が心配そうに見つめる。悪夢の幕切れを物語る惨状が阪神ベンチに影を落とした。
ああ延長戦…打球が中堅左へ舞い上がった瞬間、金本監督は十回の構想を練ったはずだ。岩貞が会沢に同点打を許し、なお九回2死満塁。しびれる局面で右から左へ流れる強風が鯉の勢いになびいたのか。ドリスが打ち取った松山の飛球を追った俊介と中谷が激突。サヨナラ落球となり、転倒して動けなくなった俊介を虎将はベンチからぼうぜんと見つめるしかなかった。
「俊介はケガをしてしまったけど、ぶつかってでも捕りにいっているわけだから。結果落ちてしまったけど、お見合いして落とすよりは全然、いい」
三塁ベンチ裏のいつもの会見場が急きょ治療スペースになったため、指揮官はロッカールームの脇で立ったまま取材に応じた。
「高いフライだったから互いが目線を見るとか…まあ、そういう中谷の若さというか。俊介も(本来)見ないといけないし…」
記録は中谷の失策。怠慢なら責めるが、懸命なプレーの結果だから注文にとどめた。
ただ、落球の代償は大きかった。岩貞が八回まで2失点。新井の本塁打による1安打投球で好調打線を封じていただけに、指揮官は「それ(続投)に迷いは全くなかった」と九回のマウンドへ送り出した。だが先頭丸に安打を許すと、これが連敗中の負の連鎖なのか、悲しいエンディングが待ち受けた。
右足を痛めた俊介はタクシーで球場から広島市内の病院へ直行。27日に大阪市内の病院で検査を受けるが、重傷の可能性もある。
「切り替える?それは、もちろん」。金本監督は心を整えるように息を吐き、眉間のしわをのばした。リーグ戦再開の首位広島戦を「ちょうどいい直接対決。ゲーム差?何てことはない。このチームは波に乗れば強いと思う」と威勢よく敵地に乗り込んだが、3連敗。福留の勝ち越し打、岩貞の粘投で勝利を目前にしながら暗転し、借金は12年以来となる「7」まで膨れた。
首位とは10・5差。この日ヤクルトが勝利したため、最下位に0・5差まで迫られた。数字上、広島が次カードのヤクルト戦で3連勝し、阪神がDeNAに3連敗なら自力優勝が消滅する。金本阪神が梅雨明けを待たずに正念場を迎えた。