北條、惨敗の中で光る気迫の猛打賞
「阪神1-7広島」(9日、甲子園球場)
阪神・北條がレギュラーへの道をひた走る。惨敗の中で光った今季5度目の猛打賞が、進化の証しだ。それでも「チャンスで打ちたいです…」と笑顔はない。尽きることのない向上心が、さらなる成長を促す。「超変革」の種は確かに芽吹いていた。
0-0の二回無死一塁。ベンチから出たサインはヒットエンドラン。2ボールから岡田の直球を振り抜くと、打球は右前へと転がり、13打席ぶりの安打となった。
中谷が一気に三塁を陥れ、作戦成功。続く岡崎の先制打へとつながった。金本監督いわく今季2度目のエンドラン成功で、それはいずれも背番号2のバットだという。
「ああいう形でボテボテになりましたけど、良かったです」
六回1死は、145キロ直球を中前へはじき返した。八回2死は3番手・今村の146キロをフルスイング。左中間フェンス最上部を直撃する大飛球を放ち、悠々と二塁まで到達した。6月19日・ソフトバンク戦(甲子園)以来となる3安打の固め打ちだ。
昨季は2軍戦112試合で打率・243、10本塁打、43打点。入団以来課題だった打撃に向上の兆しが見えた。当時DCだった掛布2軍監督が設定した「打率・280以上」の目標は達成できなかったが、手応えはあった。そしてもう一つ、リーダーとしての意識が徐々に芽生え始めた。藤本2軍守備走塁コーチが昨年を振り返る。
「数字に表れないところでしっかりできる。試合に向けての準備とか一つ一つのプレーに軽さがないんだよ。だから、北條を試合で使うと守備が締まった。状況判断とかできないことはあるけど、それは(1軍での)経験値。試合に出続けて身につけていかないと」
3年目だった北條は内野の中心として周りに声をかけ、チームを引っ張っていた。先頭に立つことで成長できると信じ、鳴尾浜で白球を追いかけていた。
志の火が消えることはない。敗北に沈み込む新生タイガース。だが、その中で「超変革」は進んでいる。