金本監督、精彩欠く鳥谷を「外せない理由」
阪神・金本知憲監督(48)が11日、甲子園球場で行われた指名練習に参加し、江越、北條、中谷、高山らに打撃指導を行った。練習後の会見では若手の技量が未熟であることを明かした上で、打率・231、10失策と攻守で精彩を欠く鳥谷敬内野手(35)を「外せない理由」を言葉の端々ににじませた。鳥谷の復調が先か、主将を凌駕(りょうが)する若手の台頭が先か。指揮官の苦悩は続きそうだ。
金本監督の鳥谷への期待は、それでも変わらない。阪神は85試合を経過した。35勝47敗3分けで借金は今季ワーストの12。指揮官にとって想定以上の苦境に立たされているが、その元凶は何か。ひとつではない。はっきり言えることは、キャプテンの攻守にわたる低迷がその主たる要因であることは疑いようがない。
打率・231、10失策の鳥谷をスタメンから外す選択肢。競争の世界では、自然と沸き上がる議論だろう。だが、指揮官は外さない。なぜか。この日の囲み会見でその理由を言葉の端々に含ませた。
「若手は自分のことで必死だよ。でも明日の試合どうこうとなれば、やはり主力。調子のいい孝介は別として、西岡、鳥谷、ゴメス。(調子を戻した)この3人あっての若手で(チームが)機能するわけだから」
指名練習に参加した指揮官は江越ら若手を約1時間にわたって密着指導した。「超変革」元年の象徴とも言える江越、北條、中谷、高山ら…そのポテンシャルに無限大の魅力を感じるからこそ、ひいき目に選別し、徹底的に技術を授けてきた。
一方で「戦力」としてキャンプから一貫して明言していることもある。主軸が安定した成績を残してこそ「勝ちながら再建」は成り立つのだ、と。現状、その構想が崩れていることが低迷につながっている。ならば、その主軸を外してこそ「超変革」と言えなくもない。それでも金本監督の腹は動かない。いや動かせないというのが、本音のようだ。
「打撃というものは、そう簡単にはうまくはならない。気持ちで何とかなる部分はあるけれど、技術がないと、いくら集中力を出しても限界がある。例えば、2000ccのエンジンでは決まった馬力しか生まれない。そんな車がレース場へ行って勝てるわけがない。レース場へ行けるエンジン、足回り、ブレーキをつけないと。そんなすぐにはチューンアップできない」
江越、北條、中谷らの「レース場=1軍」で戦う技量がまだまだ未熟であり、鳥谷ら主力をベンチへ追いやるまでの力量が備わっていないという。逆にだからこそ、チューンアップされた主軸に求めるものは違う。
「無死満塁までいっても、そこからはね…。(9日・広島戦で)若手がエンドランを決めて、じゃあ、それをかえすべき1、2番がしっかりしないとダメだということ。2人(西岡、鳥谷)があの試合でどう思ったか。どう感じたかだと思う」
金本監督は、主将に代わる新鋭の台頭を間違いなく望んでいる。と同時に、鳥谷が復調すればチームは再生するという信念も揺るがない。