球児、喜べぬ大記録 史上39人目600試合登板も
「阪神1-3ヤクルト」(28日、甲子園球場)
淡々としていた。節目に到達しても、勝利で飾らなければ意味はない。「それは知らない」。チームメートの誰よりも先にロッカールームを出た阪神・藤川は、足早にクラブハウスへ歩みを進めた。どうしても、勝ちたかった。
存分に腕を振った。出番は1-3の九回。先頭・坂口への初球内角高め147キロ直球。ボールになったが、火の玉に歓声が起きる。遊ゴロに仕留めると、代打・今浪の3球目で最も沸いた。内角高め150キロ。迫り来る火の玉。思わず打者はのけぞる。その瞬間、拍手と、どよめきにも似た歓声が起こった。
2ストライクまで追い込み、外角高め148キロで空振り三振に斬ると、山田は真ん中高め148キロ直球で詰まらせて右飛。「ふーっ」とため息をついてマウンドを降りた。ベンチに引き揚げる途中、祝福の花束を受け取ると、右手を高く掲げ、スタンドのファンに向かって頭を下げた。
甲子園での救援登板では今季16試合に登板し、16回を防御率0・00。夏休み最後となった聖地でも、抜群の安定感を誇った。
プロ野球史上39人目の通算600試合登板。阪神では山本和行以来、2人目の快挙。7月26日・ヤクルト戦(甲子園)で成し遂げた日米通算1000奪三振に次いで、今季2度目の偉業達成だ。
強いハートが右腕を支える。13日・中日戦(京セラドーム)。3番手で登板したが1死しか取れず、マウンドを島本に譲った。結果は残せなかったが試合後に、はっきりと口にした。
「切り替えるっていつ?次は、もう始まってるよ。シーズンは長いんやから。ずっと頑張らんと」。1回の失敗で、思いがぶれることはない。だからこそ、一つずつ積み重ねることができた。
甲子園でのヤクルト戦は、12年ぶりの同一カード3連敗。逆転CSへ土俵際に追い詰められた。「自分も良かったり、悪かったりなんで」。このままだとAクラスへの道は遠のいていく。逆転CSへ今こそ、チーム一丸になることが必要。やるしかない。